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文藝春秋がnoteと初の資本業務提携へ!目的はDX化?

近年における急速なデジタル化への移行もあり、紙媒体の出版物よりも、Webサイトのコンテンツで情報収集をする方が増えたのではないでしょうか。

そうした中、2020年12月10日に、出版社大手の文藝春秋と、個人がWebを通してコンテンツを発信、販売できるnoteが資本業務提携を結ぶと発表しました。文藝春秋は98年の歴史の中で、資本提携をはじめM&Aを実施するのは初めてです。

情報配信、情報収集がWebやデジタルへと着実に移行している中、両社の資本業務提携にはどのような意図があるのでしょうか。

資本業務提携とは

そもそも資本業務提携とは何なのかというところですが、簡単に言えば、該当する2社以上の企業が特定の分野に対して出資をして、協力関係になることです。M&Aの一種として位置づけされておりますが、基本的に売買というよりは『出資をし合う』というところなので、分けて考える方もいらっしゃるようです。

なお、今回行われる文藝春秋とnoteの出資額については非公表としています。

文藝春秋とnoteの資本業務提携

ここからは文藝春秋とnoteの資本業務提携の概要について詳しく解説していきます。

文藝春秋とは

文藝春秋とは1923年に創設された大手出版社の1つです。文藝春秋は紙媒体の総合誌であるイメージが強いですが、2019年11月には月額900円のデジタル定期行動くサービスをnote上で開始しており、有料購読者数の契約目標を10カ月感で達成するなど、好調を維持しています。

一方、紙媒体の総合誌の売上についても好調で、2020年7月1日に、上半期の実売部数が前年同期比104.4%であったと発表しました。期間中に最も売り上げたのは、6月18日号の約42万部であり、すでに完売となっている状況です。

また、月別の売り上げでは、多くの書店が休業した4月でさえも前年同期比100.4%、5月は111.2%、6月は112.9%と推移しています。

noteとは

一方でnoteとは、簡単に申し上げれば、自分自身の経験やノウハウをブログのように手軽に共有できるサービスです。無料で記事を公開することもできますが、有料で販売することもできます。

尚、2020年5月には月間アクティブユーザー数が6300万人を越え、新型コロナウイルスによる外出自粛要請が本格化した4月5月は特にユーザー数が急増したといいます。現在の会員登録数は260万人、1日の投稿数も平均2.6万件と増加傾向にあり、特に法人アカウントに至っては約1600件解説されたといいます。

また、ブログを1から構築するよりも、手間をかけずに始められる点や、プログラミング言語を知らなくても記事を投稿できる手軽さから、女性ユーザーが全体の64.8%を占める結果となりました。特に、30代が20%、40台が30%を占めており、子育て世代の女性が家事や育児の合間に日常や、生活のノウハウを発信している傾向にあると考えられるでしょう。

資本業務提携の狙い

直近の業績から見ても、両社とも好調といえますが、資本業務提携の狙いはどのような部分があるのでしょうか。ここからは、文藝春秋とnoteが資本業務提携を行う目的について言及してまいります。

紙とデジタル両者の書き手発掘

1つは両社で分散している優秀な書き手の発掘です。noteの加藤貞顕代表取締役は、『才能のある若者Webで作品を発表する機会が増えている。優秀な書き手のデビューができるようなキャリアパスが作りたい』と話しています。

実際、文藝春秋では、芥川賞や直木賞を受賞する作家による執筆作品も掲載されています。今後は両社が資本業務提携を結ぶことでnoteから優秀な若手作家を発掘し、noteから芥川賞や直木賞の受賞者が出てくる可能性もあるかもしれません。

書き手の育成

また、両社の書き手の育成も行っていく方針です。文藝春秋は毎年芥川賞、直木賞の受賞者が出るほどの才能ある執筆者がそろっているものの、やはりその点noteでは才能は秘めていてもなかなか各種受賞作品には劣る部分もあるでしょう。

今後は、文藝春秋とnoteの作家それぞれが人材交流をする場を設けながら、両社の書き手の育成に取り組んでいく方針です。

デジタル技術やその他リテラシーの知見育成

また、人材交流を行う中で、両社の執筆における知見育成はもちろん、文藝春秋側がnoteからデジタルの技術やITリテラシーを習得する目的も考えられます。

そのほか、note側が記事コンテンツに差別的要素が含まれていないかなど、リテラシーの観点から文藝春秋と手を組むことで強化していくことができる可能性もあるでしょう。

新規メディアの作成

更に、両社による新規事業が行われる可能性も大いにあるでしょう。民間企業や公的機関に対しての有償サービスを検討するほか、noteの加藤代表取締役社長は『個人的な考えだが、両社による新規メディアの立ち上げというアイディアもある』としています。

資本業務提携を結んだ企業がのちに将来的にはグループ会社化したり完全子会社化したりすることも可能です。M&Aの手法の中でも次のステージに進むためのプロセス的立ち位置である手法でもあると言えるため、もしかすると新規メディア立ち上げのタイミングで両社が会社分割をおこなったり、合併したりする可能性も出てくるかもしれません。

文藝春秋側のDXへの危機感も

そして、98年の歴史の中で一度もM&Aを実施してこなかった文藝春秋が現状のタイミングでnoteと資本業務提携を結ぶに至ったのには、『DX(デジタルトランスフォーメーション)』を進める上での危機感があったことも推測されます。

デジタルトランスフォーメーションとは、簡単に言えば企業内をデジタル化することで、良い変革を起すことをさしますが、デジタルへの知見がない企業についてはなかなかこのDX化が上手く行かないことも指摘されているのです。

ただ、文藝春秋は同社が運営するニュースサイト『文春オンライン』も好調で、出版社のなかでもデジタル化が進んでいる企業であると言われています。実際、新聞や雑誌の実売部数を調査する日本ABC協会の調査によりますと、2020年の7~9月の文春オンラインの月間PV数は3億2151万で、出版社が運営するWebメディアでは最多を記録しました。更に、2017年の創刊から4年足らずでこの実績ですので、日本最大のWebメディアであると言っても過言ではありません。

では、noteの力を借りずとも、デジタル化やDXは進めていくことができるのでは?とお考えになる方も多いでしょう。しかし、文藝春秋の課題として、月間文藝春秋をはじめとする既存の雑誌や小説、単行本などの紙のコンテンツをどうデジタル化し、販売するのかという点があげられていました。時事性の高い情報コンテンツに関しては、高い収入を得ることができている文藝春秋ですが、それ以外のコンテンツのデジタル化に課題が残っていたのです。

そのため、noteと資本業務提携をおこなうことで、ニュースサイトは文春オンラインで、その他のコンテンツはnoteを利用すると、2種類に分けながらの運用を実施する方針に切り替えたということになります。そうすることで、今後、時事性の高いコンテンツ以外のデジタル化、DX化を進めていくことができ、かつ作家の発表の場もnoteにまとめ、DX化を実現していくことができるでしょう。

まとめ

本記事では、文藝春秋とnoteの資本業務提携の概要と、両社の業務提携による今後の可能性について解説いたしました。文藝春秋は、出版社の中でも紙媒体の雑誌類も好調に売り上げている企業です。なおかつ、文春オンラインという自社開発のメディアへのアクセスも好調をキープしています。

そうした中でも、ある1点の課題に効果的にアプローチし、時代やニーズに合わせた方向へ転換していくためにnoteとの資本業務提携を決意したのではないでしょうか。出版社のDX化へのアプローチとして、注目すべき点であるといえます。

一方、note側からしても、今後作家の育成や発掘といった部分、受賞者の排出といった部分ではさらに飛躍していく可能性も十分に考えられるのでしょう。

今回の資本業務提携が行われた上で、事業として成功したタイミングや新規メディアを立ち上げを行う際には、両社がM&Aを実施する可能性もあります。今後も両社の活躍から目が離せません。

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