営業権譲渡は事業譲渡と何が違う?営業権譲渡の基礎知識を解説

企業が会社の中にある事業の一部又はすべてを譲渡する方法の一つに『営業権譲渡』があります。不採算部門を切り離したり、売却益を得ることができる点は事業譲渡も同様ですので、営業権譲渡と事業譲渡の違いがよく分からないといった方も多いのではないでしょうか。

M&Aは手法によって払わなければならない税金の種類が変わってきたり価格の選定方法が違ってきたりする場合もありますので、M&Aを検討している場合はM&Aに関する手法や用語、基礎知識についてしっかりと知っておかなければなりません。

そこで本記事では、売り手企業目線で営業権譲渡の基礎知識から事業譲渡の違い、メリットデメリットまで解説してまいります。

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営業権譲渡とは

そもそも営業権譲渡とは、読んで字のごとく『営業権』を『譲渡』する手法です。

ちなみに、営業権の定義としては『営利を目的として結成された財産価値があるもの』、『有形無形問わず企業が保有している利益や企業価値』などとされています。

つまりは、企業の価値を示す『のれん』が『営業権』にあたるとお考えいただいて問題ありません。

のれんについては下記の記事にて詳しく解説しておりますのでご覧ください。

知らない売り手は損をする!?M&Aにおける『のれん代』とはいったい何?

特に中小企業のM&Aにおいて、営業権譲渡は株式譲渡や事業譲渡と並んでよく活用される手法の1つであり、事業譲渡同様に契約において『引き継ぐ』とした契約関係以外は引き継ぐ必要がないという点にメリットがあります。
ただ、営業権譲渡においても、
譲渡を行ってから20年間、同一の地域や近隣の市町村などで同一の事業を行うことが会社法によっても商法によっても禁止されている『競業避止義務』が課せられるという点では注意が必要です。

営業権譲渡と事業譲渡の違い

特定の事業を引き継いだり、交渉において引き継ぐ契約、引き継がない契約が選択できるという点では、営業権譲渡も事業譲渡も同様です。

結論から言いますと、営業権譲渡と事業譲渡は同じ意味を表す言葉になります。平成18年までは『営業権譲渡』と言われてきたのですが、同年に改正された会社法と商法により『事業譲渡』という言葉に変更されました。そのため、営業権譲渡の手法や手続関係に関しては事業譲渡と同様であると考えていただいて問題ありません。

ただし、商法では現在でも『営業権譲渡』の呼称が残されています。これは、事業を引き受ける先が個人なのか商人なのかで適用される法律が変化するだけで、特に中身に変更はありませんが、商法なのか会社法なのかによって営業権譲渡と事業譲渡が区別される場合もあるということは1つ知識として覚えておくようにしましょう。

営業権譲渡によるメリット

では、売り手側から見て営業権を第三者に譲渡するメリットとはどのような事項があげられるのか、解説してまいります。

不採算の事業を切り離すことができる

営業権譲渡において一つ目のメリットといえるのは『不採算事業を切り離すことができること』です。経営をしていく中で価格的に採算の取れない不採算事業が発生することは少なくなりません。中には所得税の節税の関係であえて不採算事業も保有している場合もありますが、企業にとっては全体的に採算の良い事業が多いほうが都合がいいはずです。

そうした場合に営業権譲渡によって不採算事業を切り離すことで採算の良い事業に尽力できたり、不採算の事業自体も買い手側の強みとかけ合わさることでより良い事業に転換したりする可能性もあります。

売却益を得ることができる

基本的に営業権譲渡は事業譲渡と同様に、現金での売買が一般的です。ですので事業を売却した際に売却益を得ることができるというのもメリットの1つとしてあげられるでしょう。

具体的な売却益については企業が持つ有形・無形資産によって異なりますが、ここで得た売却益についてはオーナーや経営陣などに収められるのが一般的です。

営業権譲渡によるデメリット

ただし、営業権譲渡を行う際に注意しておかなければならないデメリットもいくつかあります。

契約関係の移転手続が煩雑である

1つは契約関係の移転手続が煩雑であるという点です。営業権譲渡では基本的に顧客や取引先、従業員や債務などすべての契約関係において自動で譲渡となるわけではありません。

よく言えば、契約関係の整理ができるともいえ、相手企業にとっては不要な債務を引き継がずに済むとも考えられるものの、配置移転コストは少なからずかかってきます。そしてそれに伴う手続も当然複雑であり、多くの時間を要することになるというデメリットがあります。

また、手続の煩雑さだけではなく、付き合い等で取引関係にあった企業や顧客、そして従業員などに営業権譲渡の旨を伝えると関係に軋轢を生むリスクがあるので丁寧に説明をしたりケアをしたりすることも重要です。

競業避止義務がある

また、営業権譲渡を行った場合、譲渡を行ってから20年間同一の地域で同様の事業を行うことは禁止されています。営業権譲渡を行う場合は、本当にその事業を譲渡しても良いのかしっかり検討し、その後の企業のプロセス等も明確にしたうえで実行するようにしましょう。

売却益が課税対象である

営業権譲渡により事業を売却し、利益を得た場合、その利益は法人税の課税対象となります。当然、消費税などと同じで売却益の金額が大きければ大きいほど課税される税金の金額も大きくなりますので、税金を支払わなければならないということも念頭に入れて売却後のプロセスも検討しておく必要があります。

M&Aにおける税金についての詳細は下記の記事に記載がありますのでご覧ください。

M&Aに関する税制まとめ M&Aで税金対策はできる?

営業権譲渡の価格の選定方法

前述までにも、営業権譲渡では企業が持つ無形・有形資産や、企業への評価によって変動するとご説明いたしました。では、実際に価格の選定で利用される『企業への評価』とはどのような事項があげられるのでしょうか。ここからは営業権譲渡における企業への評価の対象項目と一般的な価格の選定方法について解説してまいります。

営業権の価格選定における評価対象

基本的に営業権の価格選定における評価対象項目は下記の4項目になります。

①時価純資産額による評価

②時価総負債額による評価

③DCF法(将来的なキャッシュフロー)による評価

④超過収益還元法による評価

⑤利益年倍法による評価

このように、現時点での資産による評価だけではなく、将来的に生み出すと考えられるキャッシュフローや、過去の当期における純利益の平均値なども評価対象となります。

営業権譲渡の価格選定の仕方

基本的に営業権譲渡に限らずM&Aにおいてはそれぞれの会社の資産や将来性が変わってきますので一概にこのくらいの値段が相場だとは言えません。

また、営業権譲渡では売り手側と買い手側とが価額について納得し、交渉が成立すればその価格が『売却額』となります。

そのため基本的に『正式な』価格選定方法はありませんが、多くのケースで利用される算出方法は

『営業権譲渡の価額=時価純資産額+「のれん」』であるとされています。

ここでいう時価純資産額とは、現金預金や売掛金、固定資産、在庫などの有形資産を指すものです。一方のれんとは会社の伝統や社会的信用、将来性などの無形資産の価値を指すものになります。したがってこれら両者を加える方法が一般的な『営業権譲渡』の際の価格になるというわけです。

売り手側の企業にとって無形資産をしめす『のれん』が侮れないのはこのためで、如何に買い手側に『お金を積んででも買いたい!』と思わせられるような企業であるかなどがのれんを高くしたり、売却額を高くしたりするポイントでありますので、日ごろから企業の評価を落とさないようにしておくことも大切です。

知らない売り手は損をする!?M&Aにおける『のれん代』とはいったい何?

まとめ

営業権譲渡と事業譲渡は言葉の言い回しの違いであって、手法的には全く同様のものであるといったことが分かりました。ただ、売却先が個人であるか商人であるかによって、『事業譲渡』と呼ばれるのか『営業権譲渡』と呼ばれるのか、違いがある場合もありますので注意しましょう。

売却益を得て会社自体の経営をよくしたい、不採算の事業を切り離したいと思ったときに利用すると良い営業権譲渡ですが、移転の手続が煩雑であったり協業避止義務の対象であるなど、契約交渉時や譲渡後のプロセスを入念にしておかなければ失敗してしまう可能性もあります。
また企業の評価や価格の選定なども第三者に見てもらわなければ、自社が思っているよりも外野からの評価は低い場合もあるので、営業権譲渡は専門家の意見も取り入れながら慎重に行っていかなければなりません。

DX承継くんでは営業権譲渡を検討している方、M&Aで事業の売却を検討している方からのご相談を随時承っておりますので、ご相談のある方は下記のお問合せ窓口から是非お気軽にご連絡ください。

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