半沢直樹に学ぶ!敵対的買収の4つの防衛策で倍返し

『倍返しだ!』というフレーズが視聴者の中で大きな話題を呼び、社会現象ともなったドラマ『半沢直樹』は、現在、7年ぶりに続編を放送中です。

そんな『半沢直樹』の今回の続編のス―トーリーでは『電脳雑技集団社』が瀬名社長率いる上場企業『スパイラル社』の企業買収を目論むといった『M&A』がポイントとなっています。

といってもスパイラル社に仕掛けられているM&Aは、日本で多く行われている友好的なM&Aとは違い、電脳雑技集団社がスパイラル社を乗っ取る目的である『敵対的買収』というものです。『敵対的』ということは当然スパイラル社も黙って買収されるわけには行きませんので、買収を防ぐために何らかの策を取らなければなりません。

半沢直樹らは一体どんな買収防衛策で電脳雑技集団社の買収を防ぐのでしょう。

本記事では、半沢直樹のあらすじから敵対的買収について解説していきたいと思います。

※一部ネタバレとなる部分もありますのでご注意ください

【大戸屋VSコロワイド】敵対的買収に発展でTOBの行方はどうなる?

電脳雑技集団社VSスパイラル社

企業買収をする場合、大まかに分けて、被買収側も納得した上で契約をすすめ、買収に至る

①友好的買収と、
被買収側の意見を無視して強引に買収をする
②敵対的買収の2つがあります。

日本で行われる買収の殆どは①の友好的買収と言われておりますが、現在タイムリーに行われている大戸屋とコロワイドの例は、大戸屋がM&Aを拒否しておりますので敵対的買収に発展するとされています。

会社を買いたいときに知っておきたい会社買収の基礎知識

今回半沢直樹のドラマで、電脳雑技集団が行おうとしているM&Aもまた、敵対的買収で、スパイラル社の医師を無視して乗っ取ろうというような方法です。通常、公開されている株式のうちの過半数以上の株式を買い占めると、その会社の経営権や重要事項の決定権を得ることができます。

しかし、1~2話の終了時点で電脳雑技集団はスパイラル社の総株式のうち30%しか買収できていませんので、スパイラル社の経営権等を手に入れ、会社を乗っ取るには後21%の株式を買収しなければならないというわけです。

電脳雑技集団は公開買い付け(TOB)でスパイラル社の残りの21%の株を集めることになるでしょうが、当然瀬名社長や半沢直樹らスパイラル社も買収されないよう反撃に出ます。次項で被買収側が行う敵対的買収防衛策の種類について解説いたします。

敵対的買収の4つの防衛策

敵対的買収による会社の乗っ取りに関しては、もちろん買収を仕掛けられた会社は、買収をされないよう、何らかの防衛策を取らなければなりません。半沢直樹でも、第二話(7月26日放送)で買収を仕掛けてきた電脳雑技集団に対して反撃を行いました。半沢直樹らが行った買収防衛策についての詳しい解説は後述するとして、まずは、敵対的買収の4つの防衛策から解説していきます。

買収とは?M&Aの手法や買収をされたくないときの買収防衛策を解説

主な方法としては、下記の4つのユニークな買収防衛策があげられます。

ポイズンピル

『ポイズンピル』とは、『毒薬条項』とも呼ばれ、新株発行を実施することで相手企業からの買収を阻止する買収防衛策です。買収防衛策の中でも特に有名な方法で、具体的には新株予約権をあらかじめ発行して置き、一定の条件を満たした場合に自動的に発動することで、株式を希薄化する効果があります。

TOBでは、総株式のうち50%以上を取得しなければ会社の経営権や決定権を得ることができません。つまり、ポイズンピルを実行することによって、取得しなければならない株式を増やすことになるため、相手企業の必要ことを増大させ、資金不足で買収できなくなるようにするのが目的です。

ホワイト・ナイト

『ホワイトナイト』は、その名の通り日本語では『白馬の騎士』とも呼ばれる買収防衛策の1つです。第三者となる友好的な会社に株式を買収もしくは合併してもらうことを指します。当然、この場合の第三者の買収者にとっては、予想外のM&Aになりますので新株を取得できる権利など、ある程度有利な条件が提示されることが殆どです。

ホワイトナイトによるM&Aが成功すれば、敵対的な企業に買収されるよりも、友好的な企業に買収されてその傘下になるほうが今後の経営もしやすくなるでしょう。

実際、2006年にはドン・キホーテから敵対的買収を仕掛けられたオリジン東秀がイオンに要請してホワイトナイトを引き受けてもらった例があります。まさに、イオンがオリジン東秀にとって『白馬の騎士』であるというわけですね。

パックマン・ディフェンス

『パックマン・ディフェンス』とは、逆買収ともいわれ、敵対的買収を仕掛けてきた会社に向けて、逆に買収を仕掛けるというものです。当然、買収となりますと多額の資金が必要になるため、資金的な余裕や、買収を行うメリットがある場合のみ利用されます。

半沢直樹のストーリ―で敵対的買収に対する防衛策は、パックマン・ディフェンスではないようですが、パックマンディフェンスは『やられたら、やり返す』買収防衛策と覚えていただければ分かりやすいでしょう。

ちなみに、この『パックマンディフェンス』の語源は1980年代にゲームセンターで流行したゲーム『パックマン』から命名されました。それも『パックマン』では、敵に追われて逃げている際、アイテムを取得すると、一定時間敵に反撃できるようなゲームルールだったためであるとされています。

クラウン・ジュエル

最後、『クラウン・ジュエル』とは、買収側が狙っているであろう自社の魅力的な事業や資産、子会社等を譲渡したり、分社化することによって、自社を魅力のないようにし、買収欲を大きく削ぐことです。

ただ、会社の乗っ取りを防ぐためとは言え、魅力的な事業や資産等を手放すことになるわけですから、非常にリスキーな防衛策である上に、仮に失敗した場合は、善管注意義務、忠実義務違反を問われる可能性があるかもしれません。

こんなにリスキーな防衛策がなぜにこんなキラキラネームをつけられているのか疑問に思う方も多いでしょう。クラウンジュエルの由来は、買収を仕掛けられている会社を『王冠』にたとえ、『王冠の宝石』を外すことで、王冠を狙われなくするということからであるとされています。

王冠の宝石を外すことも、企業の魅力や資産を譲渡することも、持ち主や株主にとってはメリットがあまりありませんので、いくら敵対的買収の防衛策の1つであるとはいえ、あまり実行する経営者は少ないのではないでしょうか。実際、クラウン・ジュエルを実施する際は、株主総会において株主の3分の2以上の賛成が必要であり、承認を得るにも高いハードルがあるといえます。

日本の敵対的買収の例

前述にももうしあげた通り、日本では、敵対買収の事例は非常に少ないと言われておりますが、それでもいくつかの例があります。

半沢直樹らスパイラル社が仕掛けられている敵対的買収が具体的にどのようなモノなのか分かりやすいよう、日本で行われた敵対的買収の例をご紹介してまいります。

ドン・キホーテとオリジン東秀の例

2005年、全国展開されているディスカウントストア『ドン・キホーテ』は、次世代型コンビニエンスストアの事業化を計画する上で、オリジン東秀の買収を狙っていました。

オリジン東秀は弁当や惣菜店などの『オリジン弁当』や、女性をターゲットにした弁当・惣菜店『キッチンオリジン』、中華料理店『中華東秀』など500店舗以上を運営する企業です。

ドン・キホーテは、オリジン東秀を買収することで、売り場の面積が一般的なコンビニのに三倍の広さで、ドン・キホーテ並みの安さの弁当などの商品を販売するという『次世代コンビニ』を計画していました。要は、既存のコンビニに対抗し、拡大している中食市場で成功することを狙ったのです。そこで、ドン・キホーテはオリジン東秀に敵対的買収を仕掛け、傘下に収め用途しましたが、オリジン東秀はドン・キホーテの傘下に入ることを拒み、買収防衛策を行いました。

この時に行われた買収防衛策は、友好的な第三者に買収を要請する『ホワイトナイト』で、オリジン東秀はイオンに交渉し、ホワイトナイトとして、イオンがオリジン東秀を526億円で買収することで決着しました。ドン・キホーテは、買収計画の時点で買い占めていたオリジン東秀の株式をイオンに売却しています。

伊藤忠によるデサントへの敵対的買収

また、2019年3月には、伊藤忠商事がスポーツメーカー大手のデサントを相手に敵対的買収を仕掛けました。大手同士の敵対的買収ということもあり、記憶に残っているという方も多いかもしれませんが、実は両者は1964年頃から業務提携を開始し、協力関係を続けてきました。

しかし、デサントの容積悪化をきっかけに不信感を募らせた伊藤忠は、デサント側の経営陣の刷新を目的として敵対的買収を実施することになったわけです。

もちろんデサント側は反発しましたが、伊藤忠により却下され、結果的にTOBは成立におりました。

半沢直樹はどの防衛策で反撃に?

ドラマ半沢直樹の第2話では、一旦は友好的な第三者に買収を要請する『ホワイトナイト』で買収防衛を仕掛けようとしました。その新株の買収先・ホワイトナイト役は、IT企業のカリスマ・フォックスですが、実はこのフォックスという会社には投資の失敗などで多額の負債を抱えていたなどというところが明らかになったのです。

なぜ、負債を抱えていながらホワイトナイト役に名乗りをあげたのかと言いますと、もともとフォックスが電脳雑技集団に買収される予定だったためでした。つまり、スパイラルのホワイトナイトであるフォックスも電脳雑技集団が買収してしまうことで株式の持ち分が過半数以上になるというカラクリだったということです。

この場合、スパイラル社のホワイトナイトによる買収防衛は失敗に終わってしまいますので、次回以降、新たなホワイトナイトを探すなり、違う買収防衛策を実施するなり、新たな防衛を行うことになるでしょう。

今回の半沢直樹のドラマ上ではM&Aのアドバイザーがスパイラル社が不利になるよう進めてしまいましたが、実際はアドバイザーの役割は依頼してきた企業が有利になるよう進めていくことですので、通常ではあり得ません。買収防衛策を行う際は専門家との相談をしっかりと重ねながら進めていくことが重要です。

M&Aの専門家に依頼するメリットや、任せる役割とは

まとめ

コロワイドによる大戸屋への敵対的買収もタイムリーな話題であることもあり、ドラマ半沢直樹の反撃ストーリーに注目しているという方も多いでしょう。前作で『倍返しだ!』というフレーズが社会現象を起しましたが、今作で半沢直樹らはどんな買収防衛策で電脳雑技集団に『倍返し』をするのか、目が離せません。

日本で行われる買収の約9割が友好的買収であり、仮に最初は敵対的買収であったとしても交渉を進めていく中で友好的買収に切り替わる例もあります。ただ、敵対的買収を仕掛けられた被買収側は、何らかの買収防衛策を取る必要がありますし、その中でも入念なM&Aプロセスを構築しておかなければ、スパイラル社のように失敗に終わってしまう可能性もあるでしょう。

先ほども申し上げたようにM&Aアドバイザーのほとんどは今回の半沢直樹のアドバイザーのように不利になるよう進めるアドバイザーではありませんが、相性の合う合わないなどはあるかもしれません。M&Aを行う際は、信頼できるアドバイザーを探し、助言を受けながら、慎重に交渉を進めていくことが大切です。

DX承継くんでは、今後のコラムでも半沢直樹のストーリーを追っていくとともに、M&Aの基礎知識等を交えてご解説してまいります。M&Aに関するご質問等がある方は是非下記のお問合せ窓口からお気軽にご相談ください。

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