コロナ禍でもIT系M&Aが過去最多!その理由は?

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、多くの企業の業績が低迷しました。しかし、そうしたなかでもIT業界ではM&Aの実施件数が過去最多を記録し、3年連続で増加するなど、新たな局面を迎えているところです。
今回は、コロナ禍でもIT系M&Aが好調な理由や、IT業界がM&Aを必要とする理由について考えていきたいと思います。
目次
2020年IT企業M&Aの取引金額トップ10!
2020年のIT業界のM&A件数は152件で、過去10年間では3年連続で件数増加を記録するなど、好調です。特に、2020年は、全M&A件数849件のうち17.9%をIT業界のM&Aが占めており、最多業種となりました。
取引金額については、半数近くが非公表としているものの、金額が公表されている案件では、10億円未満が70%を占めるなど小規模M&Aが目だったのが特徴です。
【202年IT業界M&A取引金額トップ10】
①NEC、スイス金融企業をTOBで買収:2380億円
②インテグラル、豆蔵ホールディングスをMBO:344億円
③アント・キャピタル・パートナーズ、ソフトプレーンをTOBで子会社化:232億円
④ロングリーチグループ、ジャパンシステムをTOBで子会社化:71億円
⑤サン電子、米企業を子会社化:38億円
⑥SHIFT、ホープスを子会社化:30億円
⑦TiS、モバイル決裁ソフト開発の米企業を子会社化:28億円
⑧バンダイナムコHD、カナダ企業を子会社化:18.6億円
⑨TiS、タイのIT企業をTOBで子会社化:18億円
⑩電算システム、ビーエスアイを傘下に:17億円
取引金額トップのNECは2380億円と、2位企業に10倍近い差をつけています。コロナ禍において多額の資金をM&Aに投資したNECの戦略を次項で見ていきましょう。
NECがDX強化でスイス企業を買収
2020年のIT業界のM&Aで最も取引金額が高額であったのは、NECによるスイス大手金融ソフトウェア企業のアバロックグループを買収すると発表した案件です。
2020年12月23日に全株式を取得完了
同社を傘下に置くオランダの持ち株会社の全株式を2021年4月までに約2380億円で取得する予定でしたが、同社ホームページでは12月23日に株式の取得が完了した旨が発表されました。
(出典:https://jpn.nec.com/press/202012/20201223_01.html)
なお、総額は、M&Aアドバイザーによる助言費用を含み、令和3年3月期の連結業績予想に与える予想は10月時点で「精査中」としています。
金融業界のデジタル化との関係
アバロック社は、金融機関向けソフトウェア事業をグローバルに展開し、金融資産管理向けソフトウェアは、欧州やアジア地域でトップクラスのシェアを持つ企業です。
NECは公式サイトにて”アバロック社の金融資産管理ソフトウェアにおける優位性や実績を、NECの強味であるAiやブロックチェーン、整体認証などの最先端技術によるシナジーを発揮することを想定し、今回のM&Aを実施した”と発表しています。
(出典:https://jpn.nec.com/press/202012/20201223_01.html)
重ねて、デジタルファイナンスにおけるSaaS型ビジネスのグローバル展開も図るとの記載もありました。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、様々な業界でデジタル化が加速する中、金融領域のデジタル化は特に安心・安全・公平かつ効率的な社会の形成に向けて欠かせないものとなってきています。
おそらくこのような側面からNECは競争環境にいち早く踏み込み、グローバルトップポジションをめざすべく、同M&Aを実施したのだと考えられるでしょう。
何故IT系M&Aが増加している?
NECのM&A案件のみならず、全体的にIT企業のM&Aが増加傾向にあるわけですが、何故今IT系のM&Aが増加しているのでしょうか。
銀行の融資態度が積極化している
1つは、新型コロナウイルスの影響で銀行の融資態度が積極化しているという点です。
日銀統計によりますと、国内銀行の貸出残高は2020年5月~6月の間にそれぞれ同ねん前年同月比8%超の伸びを記録しました。これは、2001年以降最高です。
(出典:https://www.boj.or.jp/statistics/index.htm/)
法人向け融資の伸びに関しては、コロナ禍で企業の運転資金を融通したことが影響している一方、コロナ禍でM&A件数が減ってきていることや、譲渡企業の売値が下がっていることなどから、銀行側がM&A関連融資を強化していることが理由として考えられます。
新型コロナによるDX化の促進
また、新型コロナウイルスの感染拡大によるDXの促進も、IT系M&Aの増加を後押した理由として大きいのではないでしょうか。
外出自粛などの影響でこれまでデジタルとの関わりが薄かった企業もデジタルシステムを積極的に取り入れたり、テレワークを実施したりするようになりました。
このように、多くの企業でDX化の意向が強くなったことから、IT企業でもDX化の促進を図り、他企業との差別化と優位性を担保するため、M&Aが積極的に行われるようになってきていると考えられるでしょう。
M&Aに積極的なIT関係者は8割超
実際、日本M&Aセンターが2020年に5月にIT関係者を対象に行った調査によりますと、86%の方がM&Aにポジティブなイメージを持つと回答しています。
おそらく、経営者のM&Aに対する積極性も他業界に比べてM&A件数が多い理由として考えられるのではないでしょうか。
IT業界がM&Aを行うメリットは?
他業種のDX化などの影響もあり、好調に見えるIT業界ですが、好調であるときに他企業と連携をしたり、傘下においたりするメリットはどのようなことが考えられるのか気になるところです。
人材不足解消ができる
今後、マイナンバーやキャッシュレス決済が普及していき、DX化を行う企業も増えていく中で、AiやIoTが更に進展し、IT業界への需要は更に高まっていく事が予想されます。
しかし、その需要の高まりに合わせて、IT企業内で問題になってくるのが「人材不足問題」です。
AiやIoTが更に進展すればするほど、ITエンジニアには高い専門性が求められます。それらを備えた人材が現時点で足りていないのです。
優秀な人材を一から育てたり採用したりするには、多額のコストと時間がかかりますが、すでにノウハウが蓄積された企業をM&Aで買収すればそのような人材不足問題を解決することができます。
事業拡大のため
IT企業の需要が拡大していくにつれ、IT企業の競争率も激化していくでしょう。そうした中でも、優位性を担保するためには事業の拡大や強化は必須であると言っても過言ではありません。
上記に解説したNECの事例でもあるように、今後はグローバルでトップポジションを獲得していくこと、グローバルな領域に事業を拡大していくことが重要になってきます。
そうした意味ではクロスボーダーM&Aなどを実施することは、海外企業と連携をとりグローバルで活躍する企業に成長させる一歩になると言えるでしょう。
開発費用が確保できる
これは売却側の場合ですが、IT企業に買収されることで売却益を手にすることができ、新製品やソフト、サービスを開発しやすくなります。
企業の資産によっては、数十億円の資産を手にすることもできますので、リタイアを検討している経営者などは、今後の生活資金に充てることも可能です。
まとめ
本記事では、コロナ禍でも件数が着々と増加しているIT企業のM&Aの疑問に迫りました。
コロナ禍でITやデジタルへの関心が強まり、需要が拡大しているなかで、競争上の優位性やグローバル進出をかけて、M&Aを実施するIT企業は今後増えてくるのではないでしょうか。
逆にIT企業以外の企業がスムーズなDX化を図る為にIT企業とM&Aを実施する案件も増えてくるかもしれません。いずれにしても、今後はアフターコロナに向けて全業種でM&Aの最新動向には注目しておきたいところです。
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