基礎知識

知っておきたい事業承継税制〜事業承継税制のメリットとデメリット〜

事業承継をし、株式を贈与・相続した場合、贈与税や相続税が課せられることがあります。その際、特殊な要件があった場合のみ発動するのが、事業承継税制です。いったいどういう意味があるのでしょうか。今回は、事業承継税制に関することについてまとめました。事業承継税制を知らない方や、メリット・デメリットを合わせて知っておきたい方は、ぜひ参考にしてください。

事業承継税制とは?

事業承継税制とは、中小企業における経営の了承の円滑化を図るための法律のことをさします。円滑化法と呼ばれ、都道府県知事から認定を受けている非上場株式会社の株式を、会社を後継した次の世代の後継者が、贈与、相続によって取得した際に発生する税金です。しかし、一定の要件をクリアすることで、納税が猶予されていたものが免除になる制度です。例えば、贈与税・相続税を猶予してもらっている間に、後継者が死亡した際などに発生するので、とても特殊な状態でのみ発生します。

事業承継税制を適用する流れ

相続税申告書のイメージ
特例によって事業承継税制を受けることになった場合、納税猶予・免除を受けるまでの流れがどうなるのかをご紹介します。承継者が死亡するなどして特例措置を受ける場合は、会社の後継者と承継までの経営の見通しをまとめた「特例承継計画」を作成し、特定の認定を申請することが大切です。現在住んでいる各都道府県の担当に提出し、都道府県知事いずれかの確認を受ける必要があります。特例承継計画の提出と確認、贈与に関しては、どれが先でも問題ありません。しかし、贈与を受けた年の翌年1月15日までに、認定を受けるために申請をしましょう。

円滑化法は、特例措置の特例適用外の場合でも必ず必要です。記載漏れ、用意し忘れがないようにしましょう。次に必要になるのが、贈与税の申告期限です。申告期限は、贈与された翌年の3月15日までです。3月15日までに制度の適用を受ける趣旨を記載し、贈与税の申告書と一緒に税務署に提出されなければなりません。その際、利子税の額に見合う担保を用意し、申告することが大切です。

特例制度を受けた翌年に非上場株式を譲渡する場合などは、贈与税全てか、一部の利子税を一緒に支払う必要があります。しかし、何らかの特例が発生し、免除対象贈与だった場合は、納税する必要はありません。また、一度申請を出したからと言って、継続する場合はそのままでいてはいけません。継続して適用を受けるには、「継続届出書」を税務署に提出することで継続が続行します。さらに、贈与税の申告をしてから5年の間は、3年ごとに必ず提出しなければなりません。

贈与者が死亡した場合には、免除届出書を提出することで、納税が猶予されたり、贈与税の一部が免除になります。その場合は、手続きが面倒ですがしっかりと免除申請を提出しましょう。

事業承継税制の適用を受けるために必要な要件とは

ここからは、事業承継税制を適用させるために必要になる要件をご紹介します。まず、会社に関する要件をご紹介します。

  • 上場企業である
  • 中小企業者に該当しない会社である
  • 風俗営業会社
  • 資産管理会社

会社が以上の4つにあてはまらない場合、事業承継税制の適用を受けることができます。資産管理会社は、自ら使用していない現金・預金・不動産など、特定の資産が帳簿価額の増額の70%である会社を指します。一定の事業実態がある場合は除かれますが、これに当てはまる場合は、適用されることはありません。後継者に関する要件では、後継者が事業承継税制の適用を受ける場合、贈与と相続で適用の要件が異なります。

贈与の場合

事業承継税制の適用を受ける場合、納税猶予・免除などが適用されますが、これを適用されるためには、いくつかの条件をクリアしなければなりません。まず、会社の代表権を有していることが挙げられます。承継したことが分からなければ、要件には当てはまりません。次に、20歳を超えており、役員に就任してから3年以上経過している必要があります。

続いて必要なのが、後継者と肉親、親族であるなど関係性が感じられるもので、総議決数の50%を超える議決権を保有している必要があります。後継者がひとりの場合でも、最も多くの議決権を保有していることが必要です。後継者が複数人いる場合は、総議決数の10%の議決数を保有し、なおかつ最も多くの議決数を保有している人が当てはまります。

相続の場合

事業承継税制の適用を相続で受ける場合、下記の条件に当てはまらなければなりません。贈与の場合とは年数や要件が異なるので注意しましょう。まず、相続開始の翌日から5か月が超過しており、なおかつ会社で代表権を有している人が第1条件として当てはまります。次に、相続開始時から、該当者は後継者で、総議決件数の50%を保有していなければなりません。

さらに、後継者が複数人いる際は相続開始時に総議決権数の10%以上で、なおかつ一番議決件数を保有している人が当てはまります。また、相続開始の直前までは会社の役員である必要があります。

事業承継税制の適用を受けるメリット

税務署のイメージ
事業承継税制の適用を受けるためには、一定の要件を満たし、なおかつ事業が再スタートしてから5年間しっかりと継続させる必要があります。しかし、それさえ満たせば免除を受けることが可能です。しかし、場合によっては厳しいと感じることもあります。事業承継税制の適用を受けるためには、まず前提として事業が開始されてから5年間は事業を守り、決められたルールの元で事業を展開していかなければなりません。そのルールは以下の通りです。

  • 後継者が会社の代表でい続けなければならない
  • 後継者が会社の株式を保有し続ける
  • 会社の雇用を平均8割維持する

後継者が5年間会社の代表・社長としてあり続け、株主で、雇用を8割維持し続けなければならないのです。この中で特に大変なのは、雇用を平均8年間維持することでしょう。極端に言えば、10人の会社の場合は、5年間ずっと8人以上を維持しなければなりません。7人を切った時点で納税猶予が打ち切られることになります。そして、その期間分の利息をつけて税金を支払う義務が発生します。しかし、一定期間減ってしまっても、最終的に平均で8割であれば、問題ないのです。問題なくクリアすることができれば、税金を免除することができます。雇用をしっかりと見直しながら、5年間会社を整えるために従事しましょう。

5年間だけだと思っているのは危険

5年間真面目に事業に取り組み、問題なくやってこれたからといって、必ずしも免除がすぐにやってくるわけではありません。注意しましょう。5年経った場合、行っていた事業を役員に任せて社長の座を降りても問題ありません。雇用の8割というものも、概念として捨て去っても大丈夫です。しかし、株式を保有し続けることが必要です。万が一、5年経過してすぐに株式を売却してしまうようなことがあれば、今まで猶予していた税金を全て利子付きで支払わなければなりません。

会社を解散することで株式を全てキャッシュ化した際も同様です。では、どうすれば税金が免除になるのでしょうか。それは、次の後継者に事業を譲り、次の後継者が事業を無事承継することができれば問題ありません。どんどん承継が続いていくというのが大切です。息の長い話になりますが、今後もしっかりと事業を展開させ、税金を支払うことが無いようしっかりと会社の経営に取り組まなければならないという事がわかります。

事業承継税制の適用を受けることによって、税金を支払うことが無いというメリットを得るためには、その後の事を考え、後継を育てながら事業を整えなければなりません。万が一今の社長が死に、次の後継者に承継された場合でも、税金は免除となります。

事業承継税制のデメリットとは

相続・贈与のイメージ図
事業承継税制のデメリットはいくつかあります。まず、資産保有型会社や資産運用型会社に該当しないという証明書類を集めなければなりません。平成29年度に1度制度が改訂されてから、少し書類の負担は減りました。しかし、申請書の記入欄は非常に多く、時間がかかります。さらに、常時雇用従業員が5人未満の場合は、申請書の記入欄がさらに多くなるなど、書類面でのデメリットを感じることがとても多いです。書類の量・種類だけにとどまらず、確認の多さや厳格さも際立ちます。

場合によっては、膨大な量の書類を責任者が書かなければなりません。小規模の会社であればあるほど負担を強いられるようになっているのです。また、従業員数を証明する必要もあります。従業員数を正確に証明するための書類もまた、膨大で各項目も多く、かつ、社会保険関係の資料を提供してもらわなければなりません。社会保険関係の資料の提供はとても難しく、全ての資料をそろえるのは困難です。

申請書があまりにも複雑だったことから、令和元年には申請書のマニュアルが改善されました。書類も以前に比べ簡素化したことから、事務負担がかなり軽減されるようになりました。しかし、書類に関してはまだ前時代的なものも多いようで、電子申請などは一切ありません。また、複雑なのは書類だけではないのです。書類をそろえた後は、さらに複雑な制度が待っています。

事業承継税制では、条文が非常に細かく膨大な量があるのが特徴です。読むまでに時間がかかるだけでなく、専門家のアドバイスや説明がなければ分かりにくい項目が多い傾向にあります。経営者、後継者はもちろん分からないことが多いだけでなく、専門家である顧問税理士なども分からない項目がある可能性が高いです。細かい規定も多く、少しずつ調べながら出なければやっていけません。事業承継税制の免除を検討している場合は、注意しましょう。

最後のデメリットは、取り消しのリスクがあることです。この制度が持つ最大のデメリットと言えるでしょう。5年間社長でい続ける、雇用を8割守らなければならないという項目の他に、取り消し事由も26項に渡り存在します。会社が資産保有型会社になると、すぐ取り消しになるなど、細かく取り決められているのです。しかし、やむを得ず事業のために借り入れをした際や、事情があり、それが認められる場合は、半年間の猶予が認められることもあります。

従業員数や資産の関係で規約違反となってしまった場合は、やむを得ない事情に入ることが多く、偶発的な事由として認められないことも多いです。また、継続届出書を提出するのは5年間の間で3年に1度です。提出遅れがあった場合、提出の遅れが理由で取り消し事由となることも十分にあります。取り扱い、継続には十分注意し手取り組んでいかなければなりません。

このように、事業承継の際は考えておきたい制度ですが、メリットよりもデメリットの方が圧倒的に多い傾向にあります。例えば、猶予税額が億を超えてしまう場合はしっかりとやっておきたい適用です。しかし、猶予税額が数百蔓延であれば、お勧めはできません。

まとめ

事業承継税制とは、申請を出し、一定の要件を満たすことで、相続や承継したことで発生した税金を免除することができる制度です。申請には膨大な書類と申請の条件が存在し、非常に難しいです。場合によっては専門家も諦めかけてしまうほど難しい条件もあります。しかし、税金が数億に至る場合は、積極的に活用していきたい制度です。

逆に、数百万程度であれば、見送ることをおすすめします。メリットよりもデメリットの大きい制度ですが、要件に当てはまる人が適用することで、効率よく納税を免れることができます。しかし、その場合は事業をしっかりと承継し続けなければなりません。納税しつつ、事業も承継し続けたい、という要件にすべて当てはまる方は、検討してみましょう。