生命保険を活用した事業承継とは?メリットデメリットについても解説

最近ではM&Aで家族以外の第三者に事業を売り渡す方法が広がっていますが、そうしたなかでも家族に承継の意向がある場合は親族内承継を行っている企業も少なくありません。

そんな親族内承継において、経済的負担を軽減できるのが「生命保険」の活用です。

生命保険が事業承継にどんな関係があるのか?と疑問に思われる方も多いでしょう。本記事では、生命保険と事業承継の関係や活用方法、メリットデメリットを徹底解説していきます。

今後親族内承継を検討されている方は是非参考にしてください。

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生命保険と事業承継

子供や親族が経営を継いでくれるというのであれば、是非継いでほしいと考える一方、「税負担が大きい」とお悩みの方も多いでしょう。事業承継では通常のM&Aでは負担する必要のない「相続税」や「贈与税」が必要になってきます。

このような経済的負担が今後の経営にダイレクトに影響する可能性が懸念され、事業承継を断念する方も少なくありません。

企業や個人事業主の事業承継において、経済的負担を軽減する方法としては、節税対策などもありますが、「保険の活用」もその方法の1つとしてあげられています。

まずは、活用できる保険の種類や活用方法などから見ていきましょう。

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事業承継に活用できる保険の種類

事業承継に活用できる保険の種類は下記の4つがあげられます。

  • 生命保険
  • 逓増定期保険
  • 長期平準定期保険
  • 終身保険

活用方法としては、いずれの場合でも、”元の経営者を加入者、保険金受取人を後継者”というものです。ただ、4つのなかでも効果が違う場合もあるので、現状や今後の見通しなどをM&A専門家と相談しつつ加入する保険を検討する必要があると言えるでしょう。

一般的な生命保険

まず、一般的な生命保険は、単純に後継者個人の資金を確保するときに活用できます。これは家族がかけていて、該当する方が亡くなったときに受取人が保険金から葬儀料金を出したり、今後の生活資金とするのと同じですね。

ただ、掛け捨ての定期保険の保険料は、保障期間を過ぎると保険金が支払われなくなる可能性もある点と、一定の年齢を過ぎると更新できなくなる点は覚えておきましょう。

逓増定期保険

逓増(ていぞう)定期保険とは、契約して保険期間満了になるまでに、保障の保険金額が契約当初から5倍まで増加する定期保険のことです。 

長期平準定期保険

長期平準定期保険とは、経営者向けの生命保険で、通常の平準定期保険よりも保険期間が長いものです。通常の定期保険のように保険料を抑えながら終身保険のような長期保証が得られます。

終身保険

最後に、終身保険とは解約をしない限り保障期間が一生涯続く保険です。経営者が高齢であくなった場合にも必ず保険金が支払われます。

加入した年齢が低いほど保険料は安くなりますが、通常の定期保険よりも高めに設定されているという点がデメリットです。

生命保険を事業承継に活用する方法とは

では、上記4つのような生命保険を事業承継に活用するにはどのような方法があるのでしょうか。

それぞれの保険の種類ごとに見ていきましょう。

生命保険を活用する場合(個人契約)

生命保険を活用する場合は、まず現経営者の個人で契約をします。そこで、受取人を後継者にしておくことで、経営者にもしものことがあったときにも後継者に一定の資金を準備することができるわけです。基本的には生前贈与ではなく、相続の場合に利用できます。

もし相続について他の相続人が遺留分を主張した場合は保険金を利用して代償金を支払うことも可能です。

逓増定期保険や長期平準定期保険を活用する場合

株式の生前贈与や譲渡を行う場合は、逓増定期保険や長期平準定期保険を”自社株式の評価引き下げ”に活用することができます。

中小企業が自社株式を評価する際、会社の利益が圧縮されていれば株式評価額も引き下げられることになります。そこで、贈与や譲渡に係る費用や相続税を抑えることができるわけです。

この時、逓増定期保険や長期平準定期保険は保険料の1部を損金算入できるうえ、解約返戻金が高めに設定されるため、後継者の負担を軽くし余った分は経営者の退職金に充てることができます。

終身保険を活用する場合

株式を相続することで事業承継を行う場合は、”法人契約”で終身保険をかけることで経済的負担を軽減させられます。

後継者が株式を取得して事業承継を行う場合、後継者が十分な資金を保有していない場合は会社が自社株式を買い取り、その買い取り金を相続税の納税に充てます。このとき、会社は自己株式を買い取るための資金が必要ですが法人契約で終身保険をかけておくことで、経営者に万が一のことがあった際に保険金を受け取ることができるのです。

そうすることで、その資金を自己株式の取得資金に充てることができます。後継者に資金がない場合や自己株式の取得で事業承継を検討している企業におすすめです。

事業承継における生命保険活用のメリット

では、具体的に事業承継において生命保険を活用するのにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

相続税や贈与税の負担を軽減できる

1つ、すべての保険活用において共通して言えるのは「相続税や贈与税の負担を軽減できる」という点です。親族内承継の場合は、株式を相続か贈与で後継者に譲渡するわけですが、この時必ず相続税や贈与税が科せられます。

後継者に多額の資金があれば別ですが、ない場合は借入をするなど対応して支払わなければなりません。その点、あらかじめ生命保険に入って受取人にしておけば納税資金に充てることができます。

自社株式評価額を引き下げられる

そもそも、自社株式の評価額を下げることのメリットが分からないという方もいらっしゃるでしょう。事業承継においては、非上場企業では自社株式評価額が下がることで後継者の株式取得費用や納税費用をおさえることができるのです。

そのため生命保険に加入し、会社が掛け金を支払うと、掛け金のすべて又は一部を損金参入できるのでその分の資産を減らすことができるようになります。

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事業承継における生命保険活用のデメリット

一方、デメリットや注意点としては下記のような事項があげられます。

保険料を支払い続ける必要がある

1つは保険料を支払い続ける必要があるという点です。当然ですが、保険をかければ毎月保険料を支払わなければなりません。掛け金によって万が一の際におりる保険額も変わってきますので、将来の事を考えて多くの資金をかける方もいらっしゃるでしょう。

しかし、その資金が結果的に納税額と変わらない可能性もあるので、単に貯金をして置いたり、積み立てをしておく方が良い場合もあります。

損失が出る可能性もある

生命保険は解約をすると返戻金が受け取れますが、解約をした時期によっては返戻金が少ない可能性もあります。終身保険は加入期間が長いほど受け取れる額は増えていくのですが、長期平準定期保険や逓増定期保険では、満了時にゼロになってしまいます。

返戻金の額が変わる生命保険では、途中解約の時期を検討するなど対策を練っておくことが重要です。

自社株評価額の引き下げ効果が限定的な場合も

長期平準定期保険において税務上の取り扱い変更により、2019年7月8日以降に契約した場合、全額損金となるのは最高解約返戻率が50%以下のもののみになりました。

そのためそれ以降に契約をした分については、損金参入割合が制限され、自社株評価額の引き下げ対策の効果が限定的となる可能性もあります。

生命保険活用時に失敗しないために

このように、生命保険は事業承継において後継者の経済的負担を軽減させるうえで非常に効果的です。ただし、事業承継のスキームによって加入すべき保険が変わってきたり、むしろ保険をかけずに個人で積み立てをしたほうが良い場合などもあります。生命保険を活用した事業承継対策を行う場合は、キャッシュフローのバランスをとりつつ、契約する保険やちょうどよい保険料を見決めることが重要です。

対策とおもって行動したことが、損失に繋がらないよう、生命保険をかけて事業承継対策を行う場合は必ず専門家に相談しながら進めるようにしましょう。

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