今更聞けない!M&Aにおける合併と買収の基礎知識とそれぞれの違い

M&Aにおける『会社合併』と『会社買収』はよくセットで耳にする言葉ではありますが、まったく違う分野の言葉です。M&Aで後継者探しをしている方、事業拡大のために他企業を買収しようと考えている方などは、これら2つの言葉の違いについて理解しておかなければなりません。

そこで本記事では『会社合併』と『会社買収』の必要知識と、それぞれの共通点や相違点などの説明を交えながら、双方の違いを深く理解できるよう、解説してまいります。

『M&A』は『合併&買収』

合併と買収について詳しく説明をする前に、『M&A』という言葉の意味について少し触れておくと、『M&A』とは、合併(Merger)と買収(Acquisition)の英語の頭文字をとった言葉です。M&Aの手法は『合併』と『買収』と合わせて、『分割』、『資本提携』の4つに分類されるのですが、『M&A』という言葉自体は、『合併』&『買収』を意味したものになります。

買収後の手続きに失敗しないためのポイント

M&Aはそれぞれ、主に後継者不足問題の解決や事業拡大、市場や顧客に対するサービス向上を目的に行われますが、M&Aでどの手法を選択するかによってM&Aの成功や失敗に大きく関わってきますので、M&Aでは専門家の知識が必須です。

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M&Aって何?手続きの流れ、メリット・デメリットを一挙公開!

会社合併について

M&Aは『合併&買収』ということで、4つの手法の中でもこの2つの手法は代表的な手法であるともいえますが、『会社合併』と『会社買収』の違いをあまり理解できていないという方も多いのではないでしょうか。

ここからは、まず、『会社合併』について詳しくご説明いたします。

会社合併の2つの種類

会社合併とは、一言でいうと、2つ以上の会社が統合して1つの会社になることです。統合の方法としては、既存の企業が既存の他社を買い取り、1つの会社として存続する『吸収合併』と、合併対象の企業同士で新しい会社を設立する『新設合併』の2の種類に分類することができます。

『吸収合併』について

吸収合併と、新設合併の2つの種類のうち、実務上多くの企業が選択しているのが『吸収合併』です。

吸収合併とは、前述にもあるように、合併対象企業のうち、一方の法人格のみを残し、他方の法人格を消滅のうえ、合併することで消滅する会社の権利のすべてを存続会社に承継させる方法を指します。

要は、売却した企業は消滅し、買収した企業のみが会社として存続するというわけです。

『新設合併』について

一方新設合併とは、合併対象企業のすべての企業の法人格を消滅させて、権利や資産、負債などを統合して新しい会社を設立する手法のことをさします。

ただ、日本では先ほど解説した『吸収合併』が行われることが殆どであり、新設合併が行われることは稀ですが、新しく会社を設立するため時間や費用的なコストが多く係ることがデメリットであるとされています。

簡易合併とは

会社合併の手法は、上記にご紹介した吸収合併と新設合併の2種類ですが、これらを行う際の契約方式に『簡易合併』というの方法があります。

簡易合併とは、簡単に言うと株主の承認を得ずに合併を行う方法で、消滅する会社の資産が存続する会社の純資産の5分の1以下の場合に選択することができます

そもそも、合併では原則として株主総会における合併契約の承認が必要です。特に上場企業など多くの株主がいる企業では株主総会ですべての株主から承認を得ようとすると、意見が分かれたりするなどの理由で合併に手間がかかったり、合併自体ができなくなったりする可能性があります。

そのような場合、消滅する会社の資産が存続する会社の純資産の5分の1以下の場合に限り、株主の承認を得ずに会社合併をすることが可能です。

ただ、上記の条件を満たすことができない場合や、存続会社が譲渡制限会社で譲渡制限株式を割り当てる場合なども簡易合併を行うことはできません

略式合併とは

簡易合併ともう一つ、合併の契約における方式に『略式合併』と呼ばれる方法があります。

略式合併とは、簡易合併と同様に株主総会の決議がなくても合併を行うことができる方法で、存続会社となる親会社が、消滅会社となる子会社の10分の9以上の議決権を保有している場合に用いることができます

要するに、すでに親会社が子会社の支配権を握っている場合は株主総会を省くことができるということです。

会社買収について

続いて、会社買収とはM&Aを実施する2つ以上の会社をすべて存続させながら統合し、親子会社関係を構築することができる手法です。買収の方法も、合併と同様にいくつかの種類に分類されますので、解説してまいります。

会社買収の2つの種類

会社買収は、買い手側の企業が売り手側の企業の発行済み株式の一定数を取得することによって会社を買収する『株式取得(買収)』と、売り手側の企業の中の事業部門のみを現金で買い取る『事業譲渡』の2種類に分類されます。

事業譲渡の解説と詳しい手続きについて徹底解説!

ちなみに、買い手側の企業もしくは新設会社に、権利等をすべて継承するM&Aの手法の1つ『会社分割』も大きく捉えれば『買収』の1手法として考えることもできます。ただ、大枠としては買収の1つではあるものの、株式取得や事業譲渡は、グループ会社化して傘下に入るのに対し、会社分割は買い手側の会社と売り手側の会社がそれぞれ独立するというイメージですので少し意味が異なってくると言えます。

売り手側が考えるべきM&Aにおける会社分割とはいったい何?

会社分割と事業譲渡の違いと活用すべき手法

『株式取得』について

株式取得とは、買い手側の企業が、売り手企業の契約関係をすべて引き継いで経営権を掌握したいときや、売り手企業自体が後継者不足問題などに悩んでいるときに用いる方法です。

株式取得も細かく分けると、下記4つの種類に分類されます。

①株式譲渡

②新株引受

③株式交換

④株式移転

これらはそれぞれ、売買における対価や、契約方式などが変わってきますので企業の現状や、従業員の意見なども加味しながら円満に売買が進むよう、どの手法を選ぶか検討しなければなりません。

株式取得の4つの種類の詳細や、株式取得を行う主な目的等については下記の記事にて解説しておりますのでご覧ください。

株式取得の4つの種類と、活用目的について

『事業譲渡』について

続いて、事業譲渡とは売り手側の企業の中の、ある事業部門を指定して売買する手法です。事業譲渡では、ある事業を売り手側の企業に譲渡することによって、当然事業の所有者が変更されるものの、売却後でも売り手側の企業自体は存続します。

つまり株式譲渡は事業の権利や契約のみを引き継がせることを指すため、株主が変わる以外あまり変化のない『株式取得』に比べて契約内容や手続きの方法が複雑です。

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会社合併と会社買収の共通点・相違点

ここまで、会社合併と会社買収のそれぞれの細かい種類などについて詳しく解説してまいりました。双方の違いを簡単に説明すると、会社合併で対象の会社を消滅させるのか、会社買収で親子会社化して、対象企業すべてが存続するのかという点です。

手続き方法に関しては、会社合併も会社買収も、その中のどの手法を選択するかによって複雑な手続きが必要なのか、簡易的で済むのかということが変わってきますので、合併と買収でどちらが簡単、複雑というのはありません。

ただ、『会社を統合する』という点では双方ともに共通しています。

新設合併はまた別ですが、買い手側としては新規で会社を立ち上げるよりも、時間や従業員を雇うなどの人材的コストを短縮して効率よく会社の規模を大きくすることができたり、売り手側としても会社の事業内容や経営を効率よく行うために整理したりすることができたりする点も同様です。

合併と買収のそれぞれのメリットについて

このように、合併と買収は共に2つ以上の会社を1つの会社に統合するという点では共通しています。ただ、どちらかの会社が消滅するという点がひとつ、合併と買収の大きな違いであるといえるでしょう。

では、合併と買収でそれぞれどのようなメリットがあるのか解説していきます。

会社合併のメリット

会社合併のメリットは仲間の企業との結びつきが強くなり、同業他社が減ること、また事業シナジーなどが得られるといった観点から組織力が強くなるといったメリットがあげられます。というのも、合併は当事者である会社同士が1つの会社として統合されるため、買収よりも一体感を高めることができ、シナジー効果も期待しやすくなるからです。ひいては、当然会社の規模も大きくなりますので、社会的な信用を得やすくなるでしょう。

また、合併をすることにより、重複する事業を整理することができるので、シンプルかつ、無駄をなくす組織を作ることも可能です。資金力的にも2つの会社が統合することで、財務シナジーを得ることができる可能性が高まることはもちろん、消費税の仕入税額控除や、自社株評価の引き下げによる相続税対策など、各種節税効果も得られます。

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会社買収のメリット

一方、会社買収のメリットは事業譲渡・株式譲渡のどちらの手法を選択するかによって変わってきますので、分けて解説していきます。

事業譲渡の場合

会社買収として事業譲渡を行うメリットは、買い手側にとって『契約を引き継ぐ事項を選択できる』という点です。つまりは、債務などは引き継ぎたくなければ承継しないといった選択もできるということになります。売り手側にとっては、事業譲渡を行った後にも債務が残る可能性がありますが、契約関係を整理することができたり、リタイア時に現金を得ることができるといったことなどがメリットとしてあげられます。

事業譲渡の詳しいメリット・デメリットについては下記の記事でご解説しておりますのでご覧ください。

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株式譲渡の場合

株式譲渡の場合は、契約関係をすべて見直す事業譲渡に比べて、契約関係を包括承継しますので非常にスピーディーに簡潔させることができます。というのも、買い手側が株式を一定数獲得すれば、その時点で経営権が買い手側の企業に譲渡されるからです。登記など公的な機関との手続も必要ありません。

また、売り手側にとっても、事業譲渡のように従業員の契約も1からまき直しといったことがないので、雇用を守ったり安心させたりすることができるでしょう。

合併と買収のデメリットについて

一方、合併にも買収にもメリットだけではなくデメリットも存在します。

会社合併を行うデメリット

会社合併では多くのコストが発生します。例えば、株主、債権者、合併手続きに関わる専門家への支払い、合併後の事業やシステムにかかるコスト、人件費などで、かかってくるコストと、合併によるメリットが見合うかどうかも計算しておく必要があります。

この中でも人件費は要注意です。会社合併の際には、原則的に売り手企業の従業員を引き継がなければいけません。さらに給与水準は、高い方に合わせるのが一般的とされています。そのため、買い手企業は人件費がかなり増えることを念頭に置いておきましょう。また、

それだけでなく、会社合併を行うと、労働環境が大きく変わります。これまで社風や待遇が違っていた企業同士が統合することで文化の違いが露呈し、完全な融合までに時間がかかるケースも少なくありません。会社側は平等な合併のつもりでも、従業員が合併後の人事や待遇に不満を訴えるケースもあります。これらの事情から合併前と後では、売り手側・買い手側双方の従業員がストレスを訴える事例も存在します。

会社買収を行うデメリット

また、会社買収において考えられるデメリットは、『シナジー効果が生まれない可能性がある』という点です。多くの場合、買い手側はシナジー効果を見込んで買収の価値を提示します。しかしいざ買収してみると、思うようなシナジー効果が得られなかったというケースも存在します。

たとえば互いの企業が未開拓だった顧客に上手く売り込めず、売上が低迷することもあるかもしれませんし、生産効率が思ったほど上がらず、コストが下がらないというケースも考えられます。また事業規模の拡大により、管理コストが増加してしまい、マイナスの影響の方が大きくなるという例もあるでしょう。こうした事態を防ぐためにも、シナジー効果が生まれない可能性も念頭に置いて、過大評価を防ぐことが大切です。合わせて、専門家への相談は必須になります。

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合併と買収による株価の影響

会社合併や会社買収を行うと、株価が変動する可能性があります。特に、投資家や経営陣が気にするのは、合併や買収によって株価がどのように変化するのかという点なのではないでしょうか。

ここからは買収や合併が株価に与える影響について解説していきます。

会社合併における株価への影響

会社合併では、合併時に消滅会社の株主に渡される株式の数は、存続会社と消滅会社の合併比率によって決定されます。会社合併において合併後に気にしなければならないのは当然存続会社の株価です。存続会社の株価は、例えばシナジー効果が得られた、会社の規模が大きくなった、資金力が高くなったなど、合併のメリットが市場で評価されれば上昇し、市場が期待したよりも効果が得られなければ、下落する仕組みです。

仮に会社合併を行ったことで株価が上昇した場合は、ブランド力が上がったり、新たに株を発行して市場から資金調達がしやすくなるなどのメリットがあります。

 

要は、市場が期待した効果と、存続会社と消滅会社同士が期待した効果が得られ、M&Aに成功すれば、自然と株価が上がるということです。ただし、合併を行った会社同士の期待値と、市場の期待値がずれていれば、下落する可能性もあるでしょう。合併の際はあらかじめ、合併をする理由や期待できる効果などを投資家や経営陣に説明しておくことも重要です。

 

会社買収における株価への影響

基本的に会社買収を行う買収側の企業は、資金力もあり、成長の著しい、いわば『大企業』と呼ばれる企業が多いです。新たな事業を買収するなどして、会社が更に飛躍的に成長するのであれば、株価は上昇するかもしれませんが、資金力を盾に大規模な買収を行うと、逆に株価を下げてしまう可能性があります。

というのも、『大規模であるがゆえの不安』が生じるからです。例えば、いくら貯金があっても、好きなものを好きなだけ買うと、この先不安になるのではないでしょうか。それと同じで、あまりに大規模な買収を行うと、今後の経営に響くのでは、借金を背負うのではとかえって不安視され、株価が下落してしまうのです。

実際に2006年にソフトバンクがボーダフォンを1兆7500億円で買収をした際は一時的に株価が低下したと言います。

ただ、一時的ですので、買収後の業績が良かったり、期待したシナジー効果が得られれば、そこから回復することも可能です。

 

合併にせよ買収にせよ、M&Aの成功・失敗が株価に直接影響するといっても過言ではないでしょう。株価を下落させないためにも合併や買収を行う際は専門家と相談しながら進めていくことが大切です。

まとめ

本記事では、会社合併と会社買収についての必要知識と、それぞれの共通点、相違点について解説いたしました。双方ともに会社を統合するという点については共通しているものの、対象企業が消滅する、しないという点では大きな違いがあるといえます。

ですので、会社を完全に消滅させるのか、経営権のみを掌握したいのか、などの相違点の面から見ると、間違った手法を選択してしまえばその後の経営がうまくいかない場合もあります。また、合併、買収どちらかを選ぶだけでなく、その中でも共に2つの異なる種類が存在しますので、企業の状況を見ながら、細かい手法も選択しなければなりません。

買い手側も売り手側もM&Aの手法を選択するときはしっかりとWinWinの関係になるよう検討して実行することが成功のヒケツでもありますので、M&Aは専門家の知識が必須です。

会社合併や会社買収を検討している方、またその他M&Aを検討している方は是非DX承継くんのご相談窓口までご連絡ください。

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