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【M&Aの決断に至った理由】《第1回》ニトリが略奪してまで手にいれたかったもの

コロナ禍でも、M&Aは規模を問わず多く実施され、2020年1月から3月の間では2020年第1月から3月の四半期では、232件を記録しています。
(出典:https://www.businesslawyers.jp/articles/774)

大企業のM&Aもニュースで目にする機会が多く、”M&A”に興味をもち始めた企業も多いのではないでしょうか。そうしたなか、どのような企業がどのような理由でM&Aを実施しているのか気になる方も増えてきたでしょう。

そこで今回は、4回の連載記事として、これまでM&Aを実施してきた企業の事例をピックアップし、各企業が「M&Aを実施した理由」を解説していきます。

ニトリのTOBの概要

ニトリHD、島忠がTOBに賛同し、有効的買収の方向へ

2020年12月29日、家具・日用品大手のニトリホールディングスは、ホームセンター島忠への株式公開買い付けが成立し、完全子会社化したことを発表しました。買い付け価額は1株当たり5500円、総額で2,140億円に上ります。

一方、島忠の買収をめぐってはニトリ以外にもホームセンターのDCMが先にTOBを実施しており、ニトリが略奪した形となっています。島忠の当初の買い付け価額はニトリよりも1300円下回る4200円。買い付け価額的にも、店舗展開状況、成長性においてもニトリのほうが優勢という見方も多く、結局、DCMのTOBはニトリによるTOBによって不成立となりました。

このように、「略奪」とも言えるM&A争奪戦を繰り広げた末、ニトリは島忠を手に入れることに成功したのです。

ニトリがM&Aを行った理由

国内では、多くのTOB、M&Aが実施されていますが、日本で実施されるM&Aの多くは友好的に執り行われることがほとんどです。敵対的買収や、争奪戦などはあまり例がありません。

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新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワークの促進、外出自粛の影響で家具やその他家庭用品の需要が伸びており、群を抜いて急成長中のニトリが、企業としての印象を左右しかねない「M&A争奪戦」を起こした理由は一体どのような理由なのでしょうか。

ホームセンター事業の拡大

島忠はもともと、ホームセンター事業に強い企業です。DIYをはじめ、園芸やレジャー用品、ペット用品などの取り扱いが豊富にあります。

主に、家具やインテリア用品を販売するニトリにとって、島忠を買収することで得られる「ホームセンター事業」の強化は他企業に絶対に取られてはならないものだったのです。

そもそも2017年ごろから、ニトリはホームセンター事業の展開を検討していました。在宅ワークに伴い、それらの需要もうまくキャッチしていくことが目的でしょう。

都市部への展開

また、ニトリの似鳥社長は島忠について、2020年11月13日、「東京近辺、神奈川、埼玉に店が密集している、しかも一級の場所に位置している。私たちが出店していない場所にも出店している。東京近辺で一級の土地は探しづらい。そこが魅力」と言及しています。

都市部への展開がほとんどなく、地方に店舗が分散しているニトリにとって”都市部”への進出が課題でした。

土地や立地も決め手の一つとなったと考えられるでしょう。

いずれは3社統合も

更に、一部の報道ではニトリは最終的にDCMも買収し3社を統合することで日本を代表するホームセンターへと成長させることを目的としているとされています。
(出典:ニトリが島忠買収に名乗り出た理由と「壮大な野望」)

仮に、知名度が高いニトリ、都市部への展開に強い島忠、そしてプロ向け商材を多く扱うDCMが統合すれば、幅広い客層へのアプローチが可能になり、業界1位のホームセンターになることができるでしょう。

ニトリが略奪TOBをしてまで手にいれたかったものは

ニトリにとって、今回の島忠の買収は創業以来初めてのM&Aです。それが、今後の印象を左右しかねない「略奪」という形のTOBになったわけですが、略奪をしてまでニトリが手にいれたかった島忠の魅力とはいったい何なのでしょうか。

都心への店舗展開

1つは、都心への店舗展開です。これまでニトリが店舗を展開していた地方郊外は、今後人口減少や高齢化によってマーケットサイズが縮小していくことが考えられます。

だからといって、ニトリがこれから首都圏に店舗を展開しようとしても、巨額の資金がかかることや、そもそも空き地が確保できないという難点があったのです。こうして、ニトリが首都圏への展開に手を焼いていたところ、DCMが首都圏への展開を目的に島忠に対してTOBを実施するというニュースには、黙っていられるわけがなかったということでしょう。

おそらくDCMも、コロナ禍においてホームセンターの需要が拡大するなか、同業界かつ都市部への店舗展開に強い島忠を買収することで、トップシェアを狙っていたはずです。

このままニトリがDCMによる島忠の買収を見逃していたとすれば、ニトリの都市部への展開は叶っていなかったかもしれません。

網羅性

ニトリは、ホームセンター事業の展開を2017年ごろから模索していました。

ニトリはこれまで、家具や日用品の販売が主でしたので、ホームセンター事業は行っていなかったのです。しかし、地方郊外など高齢者の多い地域で、今後もより多くのお客に利用してもらうためには、幅広い客層のニーズを吸い上げ、網羅性のある商品を取りそろえなければなりません。

つまり、今後高齢者が増えていくであろう地域で、トレンドの家具や日用品を取り扱っても、ニーズにマッチせず、いずれ淘汰される可能性があるということです。郊外への店舗展開が多いニトリにとって、ホームセンター事業へ参入することによって得られる「網羅性」は絶対に行わなければならない戦略の一つでした。

DCMからの略奪を選択した理由

であれば、DCMとの買収が成立してから、ニトリが買収すればよいのではという考えをお持ちになる方もいらっしゃるでしょう。ニトリがどうしてもDCMに対抗して買収をしなければならなかった理由として考えられるのは

①DCMの買収が成立すればホームセンター事業への参入の障壁が高くなる
②いずれ買収をするとなれば敵対的買収になる可能性も
③のちに買収価額が高額になる可能性がある

の3つです。

おそらく、当初の予定通りにDCMのTOBが成立し、DCMの傘下に島忠が入る形となれば、もともと業界トップシェアを誇っていたDCMと、都市圏への展開に強い島忠が手を組めば、ホームセンター事業の中でも群を抜いてシェア率を拡大できるようになるはずです。

ともなれば、ニトリが今後ホームセンター事業に新規参入をしようとしても、参入の障壁が大きくなることが予想できます。

 

また、DCMと島忠が手を組み、大きな収益をあげるグループに更に成長することになれば、いずれニトリがこれら2つの企業に買収を持ちかけた時、DCMから反対され敵対的買収にもつれ込むことも懸念されるでしょう。仮に敵対的買収にはならなかったとしても、巨額の買収資金が必要になる可能性があります。

以上のことから、ニトリは買収争奪戦を起こすことになったと考えられるでしょう。

まとめ

「お、値段以上」のキャッチフレーズで多くのユーザーに支持されているニトリ。今後は島忠と手を組んだことで、積極的に首都圏ユーザーのニーズを吸い上げ、幅広い客層に愛されるビッグ企業へと更に成長していくことでしょう。

M&Aは、主に事業拡大やノウハウの共有を目的に実施されますが、今回の事例のように「土地」に目を向けた例もあります。ECサイトなどの展開も広まってきていますが、まだまだ「実物を見ること」への価値は下がっていません。そうした意味では、小売業は「土地」の拡大を目的にM&Aを行うのも戦略となりそうです。

自社の弱みを把握することがより良いM&A戦略を立てられるといえるでしょう。