M&A

自社株でのM&Aは国の認定不要に。今後のM&Aはどう変わる?

M&Aの実施件数は、ここ数年連続して増加傾向にあり、特に2019年は過去最高件数の4088件を記録するなど好調ぶりを見せていました。しかし、M&A助言会社のレコフが10月5日に発表した統計によりますと、2020年1月から9月までのM&A件数は前年同期比12%減の2686件と9年ぶりに減少したことが明らかになりました。

これについては、新型コロナウイルスの影響によって主力事業の収益化を優先したことが要因として考えられますが、それと同時に、そもそも国の支援策が使い勝手が悪かったり利用しにくかったりしたことで、M&Aを計画する余裕が十分になかったことも考えられるでしょう。

そうした中、政府は2021年の税制改革に向けて自社株でのM&Aを行う企業にむけて税優遇を行う方向で検討していることを明らかにしました。税優遇制度が導入されれば、今後は更にM&Aを実施しやすくなり、市場自体も活性化することが予想されますが、その内容とはどういったものなのでしょうか。

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M&Aにおけるこれまでの税制度

現在は、国が計画認定したM&Aによる企業再編案件にのみ、税優遇を認めておりました。しかし、この認定を受けるには、債務がないことや雇用への配慮、新規事業の開拓など9項目の必要条件があることから、審査が厳しく時間も係るため認定を受けた事例は殆どありません。

また、TOB(株式公開買い付け)を実施すると、『株式売却』とみなされて、売却益相当が課税対象になり、納税のために資金を別に用意する必要があるのもデメリットでした。

これにより、迅速な企業・事業再編の妨げになるとの指摘が各業界からあげられ、経済産業省も見直しを求めていたところです。

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計画認定不要化、M&Aの活性化へ

そして現在、先述の現行制度を改善し国からの計画認定がなくても税優遇を受けられるようにする案が検討されています。

・税優遇の対象は株式を対価としたM&A

改正案における税優遇の対象は、株式を対価としたM&Aで、下記のようなイメージです。

株式を対価としたM&Aの多くは『TOB(株式公開買い付け)』という方法で、これまで売却時に得た株式による収益分が課税対象とされていた部分が、税優遇されるということになります。

尤も、売却側については納税の資金確保のため、受け取った株を売却する企業が殆どでした。しかし、受け取った株を売却すると、株価下落に繋がっていたため、税優遇されることは株価の下落を防ぐのにも有効的であると期待されています。

・税優遇でM&Aを後押し

2019年まではM&Aが好調に行われていたこともあり、こうした税制度の見直しは行われてきませんでした。しかし、新型コロナウイルスの影響で自社の資金確保を最優先に動いた結果、M&A市場は低迷し、これらの税制度に対する課題も浮き彫りになったということです。

今後、税優遇制度が導入されれば、売却側の資金確保も十分にできるようになり、M&Aを実施する企業も増えてくることでしょう。

・税優遇は東京市場の活性化にも繋がる?

M&A自体の活性化と併せて、期待されているのが東京市場の活性化です。東京市場は時価総額が相対的に小さく、似たような事業を手掛ける企業が乱立していることが指摘されてきました。というのも、これによって市場の効率性や投資先としての魅力の面で海外市場に劣っているからです。

税優遇制度の導入により、株式を対価としたM&Aが行いやすくなれば、企業再編や合併などが盛んにおこなわれ、東京市場の活性化にもつなげられる可能性があります。

税優遇されることによるM&A実施側のメリットは

株式を対価としたM&Aで税優遇画されることにより、市場が活性化すると申し上げましたが、実際にM&Aを実施する側のメリットとしては以下の点があげられます。

・納税による支出を抑えられる

・株式の下落を防ぐことができる

・買い手が見つかりやすくなる

・株主の同意を得やすくなる

以上4点について詳しく解説していきましょう。

・納税による支出を抑えられる

まずは納税による支出を抑えられるという点が最大のメリットであるといえるでしょう。特に、M&Aで1億円を超える取引も多く行われています。単純に考えれば1億円の売却益を得た場合、得た売却益に対し合計で数十パーセントの納税を行わなければならないわけです。

1億円の取引の場合は、多少は利益が残っているかもしれませんが小規模な取引の場合は、M&A仲介業者への支払いなどを含めるとほぼ利益がない状態になる可能性もあります。

その点税優遇制度によって納税による支出を抑えられるのは嬉しい利点です。

・株式の下落を防ぐことができる

先述にも申し上げたように、売却益で得た分が課税対象となると、売却側は納税のために資金を別に用意する必要が出てきます。この時、資金確保のために受け取った株を売却すると、株価下落に繋がる可能性があるのです。

今後売却企業の株主が受け取った株式を売却するまで、課税を繰り延べることができるようになれば、一度に大幅な株価下落を防ぐことができると期待できるでしょう。

・株主の同意を得やすくなる

株式を対価としたM&Aの場合、株主総会を開いて株主の同意を得なければM&Aを実行することができません。

株価下落を防ぐことができるようになれば、M&Aに対する株主の同意も得やすくなることが考えられます。

・買い手が見つかりやすくなる

税優遇制度によって、M&A市場が好調になれば、M&Aを行う企業やM&Aに興味を持つ企業がふえ、買い手が見つかりやすくなる可能性もあります。

今回の税優遇制度については、売却側への支援ですが、すでに買い手側に対するM&A支援制度は多くありますので、買い手売り手ともに支援制度を大いに活用したM&Aが話題になれば、M&Aを検討する企業も増えてくるでしょう。

2021年度の税制改正で改正される見通し

なお、同税優遇制度に関しては、2021年度の税制改正で改正される見通しです。

現在の税優遇の仕組みは2021年3月末に期限を迎えるため、政府は2021年の税改正に向けてM&Aにおける支援策の利用方法を見直し、国の計画認定がなくても課税繰り延べができる案を検討しています。

ですので、2021年4月以降に株式を対価としたM&Aを実施する企業については、税優遇が受けられるようになっているかと思いますので、是非国の支援制度を大いに活用するようにしましょう。

まとめ

本記事では、株式を対価としたM&Aに対する税優遇制度の、現状の検討案について解説いたしました。同案が可決されれば、2021年4月以降から、今回ご紹介した税優遇制度が対象のM&Aに対して適用されることになります。

今後はM&A市場を活性化させるためにも、国はどんどん新たな支援策を打ち出していくはずです。M&Aを検討されている企業は、国の支援制度はどんなものがあるのかリサーチをしておくことで、いざM&Aを実施する際に、様々な優遇制度を利用することができるでしょう。

また、数ある支援制度について詳しいアドバイスやサポートを受けるためにもM&Aの専門家への相談は必須です。M&Aで企業や事業の売却を検討されている方、逆に買収を検討されている方も是非DX承継くんのお問い合わせ窓口までお気軽にご相談ください。

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