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ニトリHD、島忠がTOBに賛同し、有効的買収の方向へ

大手家具店のニトリHDは、新たな事業拡大計画として、ホームセンター事業を展開する『島忠』に対しTOBを実施する旨を29日に発表しました。

※2020年12月29日、家具・日用品大手のニトリホールディングスは、ホームセンター島忠への株式公開買い付けが成立したと発表しました。島忠をめぐっては、ホームセンターのDCMがニトリよりも先にTOBを実施しておりましたがニトリが対抗した形でTOBを始めたという経緯があります。(12/29追記)

本記事ではニトリによる島忠の完全子会社化の目的に焦点を当て、解説していきましょう。

DCMは買い付け額を引き上げなければ、子会社化の実現は難しくなりますが、ニトリとDCMを巡った買収合戦はどのような結末を迎えるのでしょうか。本記事では、ニトリが発表したTOBの内容と、DCMの存在がありながら争奪戦に挑む理由を考察しながら、買収合戦の結末について予想していきたいと思います。

ニトリHDによるTOBの概要

10月29日のニトリHDの発表によりますと、首都圏を中心にホームセンター事業を展開する『島忠』に対してTOB(株式公開買い付け)を実施し、完全子会社化を目指しているということです。

まずはニトリHDによるTOBの概要から目を通していきましょう。

MBOとTOBの相違点とそれぞれのメリット・デメリットについて解説

ホームセンター『島忠』に対してのTOB

TOBによる買い取り価額は1株あたり5500円、TOB成立後は島忠をニトリの完全子会社化するとしています。

ニトリは現在全国に626店舗あり、主に家具や日用品の販売を行っていますが、TOBにより島忠を傘下に収めることで新たにホームセンター事業に参入するとともに、事業拡大をしていく方針です。

島忠はDCMのTOBにすでに賛同済み

一方、島忠は10月2日にDCMホールディングスとの経営統合に同意し、10月5日から1株4,200円でのTOBを実施していました。※DCMのTOBについてはニトリによるTOBによって不成立となりました。(12/29追記)

DCMホールディングスが何者なのかという点について詳しく説明しておくと、各地方に有力ホームセンターを展開する企業です。北海道、東北地方にはホーマック、中部地方ではカーマ、中四国ではダイキなどを展開しています。

DCMはこれまでにも、大手企業ケーヨーと資本提携をして持分法子会社としたり、地方の中堅中小同業を買収をしたりして、経営統合を繰り返しながら業界トップを走ってきたのですが、2020年業界トップシェアの座をカインズに許すこととなってしまいました。

おそらくこうした背景もあり、DCMは島忠と手を組むことで再度業界トップシェアへ返り咲く計画を立てようとしているのでしょう。

また、DCMは地方への展開は行っているものの、首都圏の店舗数が少なく、エリアのバッティングが少ない状態です。

そこで島忠が持つ家具や照明、カーテン、カーペット、インテリア関連の小物などによるクロスマーチャダイジングのノウハウなどと、DCMのプロ向け商材やリフォーム、住宅資材などで補完関係が築けるうえに、首都圏への店舗展開によるシェア拡大も行っていけるであろうと想定し、両社が共にTOBに賛同した状態となっています。

DCMの対応

DCMはニトリの発表に対し、10月5日から行っているTOBについては今後も続け、予定通りにTOBの期限を待つとのコメントを発表しました。

ただ、ニトリが提示したTOB価額は、DCMよりも1,300円高い5,500円です。今後買収合戦ともなれば、DCMとしてはTOB価額の引き上げに対応せざるを得なくなるでしょう。

※ニトリはDCMより約3割高い買い付け価格となる1株5,500円を提示し、DCMはこれに対してTOB価額の引き上げを行わなかったため、不成立となったという要因が考えられるでしょう。

・今後については協議がなされる方針

ニトリ側は、島忠とDCMの統合合意を受けて対抗TOBを決断したと説明をしており、29日の時点では島忠側へ話を通しておりません。

すでにDCMとのTOBを実施していた手前、ニトリの参入による買収合戦が勃発すれば、その判断は島忠にゆだねられることになるでしょう。同ニトリの発表を受け、島忠側は『今後、DCMホールディングスのほかニトリとも誠実に協議などを行い、当社の企業価値や株主共同の利益の観点から慎重に検討を行ったうえで、改めて当社の見解を公表する予定です』とコメントしています。

現状DCMとのTOBは行われていますが、ニトリからの正式提案を受け次第、内容を精査する方針です。

ニトリが争奪戦に挑む理由は?

では、ニトリが島忠とDCMの経営統合の発表を受け、争奪戦に挑んだ具体的な理由とはどういった理由があるのでしょうか。

巣ごもり需要の拡大

尤も、ニトリは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う『巣ごもり需要』で、在宅勤務向けの家具やキッチン用品の販売が好調だったこともあり、ニトリHDの2020年8月の中間連結決算は純利益が35.1%増の497億円と最高記録を更新したとしています。

未だ終息時期が見通せないコロナ禍において、在宅ワークやオンライン授業の実施がニューノーマル化していく中、ホームセンター事業に参入することでさらなるシェア拡大を見込めると判断したのでしょう。

首都圏展開への執着心

北海道から発祥し、今や全国展開を果たして順調に売上を拡大しているニトリでも、人口密集地である首都圏中央部には殆ど空き地がなく首都圏攻略に苦戦しているのが現状です。

また、土地の確保の難しさだけでなく相応のコストもかさむため、投資モデルを修正せねばなりません。

更には、ニトリがこれまでに地盤としていた地方郊外は、今後人口減少や高齢化によってマーケットサイズが縮小していくことも考えられます。そのため、いかなる方法を選択してでも首都圏確保をしたいニトリにとって、首都圏を中心に大型ネットワークを持つ島忠がDCMとのTOBに応じるというニュースに、争奪戦に乗り込むほか選択肢がなかったのです。

 

このような理由から、ニトリは今回のTOB争奪戦を起し、何としてでも島忠の完全子会社化を目指したい方針でいます。仮にニトリとのTOB成立ともなれば、首都圏への店舗拡大を手にしたニトリが、今度は海外企業と手を組んで、海外進出に向け動いていく可能性もあるかもしれません。

 

もはや、いつまで続くかわからない世界的な『外出自粛ムード』で、ニトリの成功期待感は高まっており、今回のTOBが海外進出計画のための第一歩と言っても過言ではないでしょう。

買収合戦について

今回のような買収合戦ですが、ニトリによる本事例が特例というわけではありません。これまでにも何度か同じような買収合戦が行われた事例があります。

会社の争奪戦の過去事例

2019年ココカラファインの買収をめぐって、マツモトキヨシHDとスギHDが争奪戦を繰り広げました。もともとは2019年4月26日、ココカラファインとマツキヨHDが資本提携の検討、協議を開始していたものの、そこに6月1日、スギHDが参戦したというのが大まかな経緯です。

ココカラファインは特別委員会を設置して、スギHDとマツモトキヨシHDそれぞれの提案を総合的に検討したうえで、マツキヨとの統合協議を選択しています。

マツキヨとココカラファインは来年10月を目途に経営統合する予定ですが、それが実現すれば、売上高は一兆円規模となり、ドラックストア業界で首位に立つと予想されています。

買収合戦の末路

どんなに壮絶な買収合戦が繰り広げられたとしてもTOBや資本提携を含むM&Aの大元の目的の多くは、『M&Aを行ったことでシナジー効果が得られるのか』です。つまり、被買収企業やその株主がどちらの企業とM&Aを実施すれば、シナジー効果が得られるのか、メリットが得られるのかというところを天秤にかけ、最終的な選択を行うということです。

ココカラファインは最終的にマツキヨとの経営統合を選択しました。もともと収益性の高くなかったココカラファインですが、高収益を記録しているマツキヨと経営統合をすることで、収益力の拡大とシェア拡大を見込んだからに他なりません。

ニトリとDCM双方から買収を申し込まれている島忠は、今後得られるシナジーなどを想定しながら、総合的に判断していくことになるでしょう。

まとめ

本記事では、ニトリHDによる買収合戦の概要解説、および、ニトリが争奪戦にもつれ込ませた理由は何だったのかという点の考察を行いました。過去の事例を見てもそうですが、最終的には、TOBを実施するメリットが大きいのは島忠にとってニトリなのか、DCMなのかというところにゆだねられてくるでしょう。

そういった意味では、現在売上好調かつ、業界内で独り勝ち状態のニトリからのTOBの申し出は、島忠にとって新たなチャンスともいえるのではないでしょうか。尤も、DCMも業界トップシェアを誇っていた企業でもあるわけですが、何せ事業規模等はニトリよりは劣るため、いかほどのシナジーが得られるのかという点については疑問が出てきます。

今後は、業界問わずM&Aを実施し新規事業に参入しながら、シェア拡大をしていく企業も増えていくでしょうから、島忠がどのような判断を下すのか目が離せません。

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