知らない売り手は損をする!?M&Aにおける『のれん代』とはいったい何?

M&Aを検討しているとき、よく耳にする言葉に『のれん代』というのがあります。お店や企業の資産価値を表す指標ともいえる『のれん』ですが、M&Aを検討している方の中でも、この『のれん代』について理解しているという方はそう多くないのではないでしょうか。

実はのれん代について知っているか知らないかで売却益が変わってくる場合もありますので、会社を売りたいと考えている方は『のれん代』について理解を深めておかなければなりません。

そこで本記事では会社売却における『のれん代』について解説してまいります。

のれん代とは

そもそもM&Aにおけるのれんとは、貸借対照表における勘定科目の一つで会社や店舗の、過去の歴史の中で築き上げた信頼や、収益力の高さなど、目に見えない資産を示すものです。要するに、買い手側の会社が、売り手の企業に対して『高値で買いたい』と思わせるような売り手企業の見えない価値を表すものと解説すると分かりやすいでしょうか。
なお、M&Aにおいては、のれんもしくは対価の支払いがあることからのれん代と呼ばれており、建物等の固定資産とは異なって実物がなく目に見えない資産であるため無形資産の一つとして整理されています。

つまりは将来性の高い事業や企業、シナジー効果が期待できるM&Aの場合、有益な無形資産がたくさんあるとして、売却価格に『のれん』を上乗せすることができるため、売却益が高くなるということです。もちろん、のれんについては売り手側の会社の状態をみて買い手側がのれんを判断し、買収価格に上乗せをするという形になりますので、会社を売りたいと考えている方であれば、『のれん』をできるだけ上乗せしてもらえるよう、ブランド力や顧客情報などを充実させておかなければなりません。

お問い合わせはこちらまで

のれんの償却期間

M&A売却の際に無形資産として上乗せされたのれんには一定の償却期間が定められています。基本的にM&Aで計上するのれんは、他の無形固定資産と同様に減価償却が必要で、資回収を考慮しながら最長20年以内での償却を設定しなければなりません。これは買い手側が行わなければならない『会計計上』の1つになりますので、売り手側は基礎知識として覚えておくだけで結構です。

のれん償却や、会計処理の方法については別コラムとして記載いたします。

のれん代の計算方法

のれん代は、時価評価替え後の純資産額と、譲渡価格の差分です。のれん代は理論の積み上げで決まるものではないので、結果から逆算した差額で算定することになります。

ですので、計算式は下記のようになります。

のれん代=M&A価格ー(M&A対象の資産ー負債)

M&Aの対象の資産ー負債というのが、M&Aにおける純資産を表すもので、図をもとに説明すると、純資産からM&Aの価格を引いた差額が『のれん代』ということです。

例えば仮に土地や建物などの有形財産に対する代金が2億円の企業である場合、純資産は2億円です。しかし、該当する売り手企業が土地や建物などの有形財産があり、かつ年間2億円の営業利益をあげる会社であった場合、売却益も高額になることが予想できるでしょう。

このとき、該当する企業が10億円で売れた場合、有形財産の2億円以外についた8億円が『のれん代』です。

のれん減損損失とは

のれんとは、前述にもあるようにM&Aにおいて、売り手の企業に有形の資産価値を超えた収益性があるから、純資産額以上にお金を出して買い取られているものです。したがって、買い手が実際買い取ったあとに経営をしてみたら、当初期待しているほどの収益性はなかったという状況になった場合、上乗せしたのれんという資産は、将来のキャッシュで回収できないのでは?」という問題が発生します。


つまり、M&Aの投資額が予定通り回収できそうにないときに、のれんの帳簿価額を回収できる額まで切り下げなければなりません。このときに発生するのが『のれんの減損損失』です。また、のれん代は前述にもあるように『目に見えないモノに発生する代金』ですので通常の固定資産に比べて優先的に減損処理の対象として扱われます。

もちろんのれんの価格を決めるのは買い手側の企業ですが、売り手側の企業は今後買い手側の企業との関係が悪くなるなどして、売却に該当した事業の残された社員などが不利にならないよう信頼性のある無形財産を提示するのも売買における売り手の義務でもあるといえるでしょう。
M&Aにおいてこうした様々なトラブルを防ぐためにも、M&Aの専門家への相談は必須です。

デューデリジェンスの調査方法や意味とは?

お問い合わせはこちらまで


売り手側から見た『のれん代』とはどういうものか

このように、『のれん代』とは、買い手側の企業が売り手側の企業に対して見出した『企業的価値』といっても過言ではありません。
つまり、売り手側からみたのれん代とは、自社の将来をより良く見せることができれば売却時により多くのキャッシュを手に入れることができるものであるということです

そのため、M&Aにおいては、売り手側の企業はできるだけ多くののれんが算定できるような要素を準備しておくことができれば、より有利にM&Aを進めることができます。

ですから、会社を売りたいときは是非知っておきたいM&Aの基礎知識のうちの1つといえるでしょう。
もちろん専門家へ相談しながらM&Aを進めていくというのも大切になります。

お問い合わせはこちらまで

売り手が知っておくべきのれん代を高価にする方法

売り手側としては、できるだけ企業価値を引き上げ、売却時の値段を高価にするためにも『のれん代』は見逃せないモノです。ここからは売り手側が知っておくべきのれん代を高価にする方法について解説します。

自社を高く評価してくれる買い手を見つける

のれん代は、前述にもあるように買い手側の企業の主観で値段が決定されるものですので、高値で企業を売るには、

①自社の強みや弱みを分析している

②強みに価値を見出し弱みを気にしない

という企業を対象にすることです。

当然ながら会社には強みがあれば弱みもあるもので、買い手企業にとって強みの価値よりも弱みに対する負の印象が強ければのれん代が高くなることはほぼ見込むことができません。

自社の強みを欲しがっている企業や、自社の強味は持っていないが、弱みを補完できる企業などを買い手とすることでのれん代を高価にすることができるでしょう。

買い手に『ほしくなるような情報』を与える

簡単に言うと、売り込みの際に『良い会社ですよ』とアピールしていくことです。CMなどと同様であると考えていただければ分かりやすいでしょうか。買い手側は売り手側の企業がどんな会社かなど具体的なことは何も分かりません。

あいまいな情報では買い手は逆に不安を感じてしまいますので、正確で具体的な情報を開示して『買いたい』と魅力を感じさせることが大切です。そうすることで自社を高く評価してくれる企業も見つかりやすくなる可能性もあります。

買い手候補同士を競合関係にし『争奪戦』を起す

自社を買いたいという買い手が複数集まった場合、入札形式で争奪戦を起させることでのれん代が高値になる可能性があります。

というのも、オークション等で想像してみると分かりやすいかもしれませんが、何かほしいものがあったとき、割高でも買いたいと思う一方で買えるなら少しでも安く買いたいと思うのが通常ではないでしょうか。そのため、他に競合相手がいない1対1の交渉の場合、買い手は値下げ交渉を行ってくる可能性があるということです。
中小企業M&Aの場合は特に初心者である売り手と熟練者である買い手の交渉になるケースが殆どですので、売り手のほうが圧倒的に不利になってしまいます。その際、入札形式で複数の企業で買い手を競わせ、それぞれに『他企業に負けない価格を提示して買いたい』と思わせることができれば、不利な状況でも高値で取引を行うことができます。

ただ、買いたいと申し出た企業が1社であった場合は、上記のような入札形式をとることはできません。この場合でもできるだけ他社の存在をアピールすることが大切で、専門家の助言なども必要になってきます。

買いたいと申し出た企業は1社であったができるだけのれん代を高くしたいという方はM&Aの専門家にご相談ください。

お問い合わせはこちらまで

M&Aにおける『のれん減損』とは

以上のように、会計における「のれん」とは、具体的な数値には現れないような事業の付加価値を示すための指標であり、M&Aにおいては非常に重要な考え方のひとつとなります。

しかし、「いざのれんを含んだ価額で買い取った会社が、当初の期待よりも収益性が低かった」という場合なども容易に想像することができるでしょう。

>『負ののれん』って一体何?会社の価値が低いってこと??

『負ののれん』って一体何?会社の価値が低いってこと??

ここからは、こうした「のれん減損」の仕組みや防ぐポイントなどについて、わかりやすく解説していきます。

のれん減損が発生する要因

そもそものれんとは、M&Aの対象会社に有形の資産価値を超える収益性が見込める場合に、その付加価値を具体的な金額としてプラスする考え方を指すものです。

ブランドや知名度、競争力や信用力、競合における先行者利益や優位性などにおいては、後発の企業がイチから入手することは非常に困難であるため、そうした目には見えない価値を買収価額に計上するのは当然のことです。

しかしながら、今後の将来性や伸び幅などの不明瞭な要素を金銭的な価値として便宜的に置き換えているわけですから、当然のことながらその価額に見合った収益性が保証されるかと言われれば決してそうではありません。

そのため、のれんの帳簿価額を回収できる最低限の額まで切り下げてやる必要があり、このときに発生する減損損失が「のれんの減損」というものになります。

こうしたのれん減損が生じてしまう要因としては、主に下記の2つが挙げられます。

「高値づかみ」による要因

これは、M&Aにおけるそもそもの買収価格が高すぎる際に発生するもので、無形資産の過剰な評価やデューデリジェンスの不足から起こるものです。

のれんの代金に関しては、すべて買い手の主観によって決定し、相場や具体的な計算式というものが存在しないために、かえって過剰な評価が発生しやすい土壌にあります。

このような高値づかみを起こさないためにも、入念なデューデリジェンスによる将来的な収益性のシミュレーションなどが重要となるでしょう。

「PMIの失敗」による要因

M&A成立後の事業承継が思うようにいかないような場合にも、のれんの減損損失が発生します。

買収以前に想定したいたよりも事業利益が出ていないような場合や、想定よりも収益性が引くかった場合などには、このような事業承継の停滞が発生しやすい傾向にあります。

高値づかみと同様に、デューデリジェンスなどの事前調査を入念に行っていくことで、こうした事業承継の失敗リスクを回避することができます。

のれん減損が発生したらどうする?

のれんは買い手の主観に依存してしまうという性質上、その価値や価格設定においては適正なものであるかの判断が難しいでしょう。のれんの減損損失が発生してしまうケースというものも非常に多くあります。

しかし困ったことに、のれんの減損処理の時点においては、過去の経営施策の失敗に起因するものが大部分を占めてしまいます。そのため、発生した際の対応では手遅れであるケースがほとんどでしょう。

のれん減損を最小限に抑えるためには、M&A成立以前の事業調査やデューデリジェンスの実施から、妥当性の高い適性価格を設定しておくことが重要な要素であると言えるでしょう。

>デューデリジェンスの調査方法や意味とは?

デューデリジェンスの調査方法や意味とは?

>M&Aで失敗しない、会社の買い方

M&Aで失敗しない、会社の買い方

『のれん減損』を発生させないためのポイント

明確な指標や相場などが存在しないのれんという概念は、無形であるがゆえにその実態は非常に掴みにくく、企業における価値を見誤ってしまうリスクがあります。

では、一体どうすればこのようなのれん減損を防ぐことができるのでしょうか。ここからはのれん減損を回避するためのポイントについて、あわせて3つのポイントに絞って解説を進めていきたと思います。

M&A前に実態調査をしておく

まずは、M&A成立前の実態調査をなるべく詳細に行っておくということが大切です。

事業の内容や従業員の規模などはもちろんです。さらにブラックボックス化しやすい会計項目などにおいては、成立前の事前調査を怠ってしまうと成立後の減損損失が大きくなってしまう恐れがあるため、慎重に進めていく必要があるでしょう。

デューデリジェンスの際には、相手側の企業の価値をより詳細に調査しておき、外部の調査機関などを通しながら客観的でフラットな評価を行っていくことで、成立後の大幅な減損損失を防ぐことができます。

実態に基づいたM&A価額を選定

価格設定を妥当性の高い価格に定めるということも重要なポイントのひとつです。

現状の資産をはるかに上回るような高すぎるのれんを設定してしまった場合には、会計処理後の減損がより大きく現れてしまいます。買収価格が適切な価値となるようにあらかじめ注意しておく必要があるでしょう。

特に、大幅な減損などが生じてしまうと周囲の注目も自然と高まってしまい、最悪の場合には成立前の経営者による経営責任が追求されるような事態にも発展しかねません。妥当性の高い価格設定が重要となるでしょう。

人員整理の検討

人員整理を検討するというのも、のれん減損のリスクを回避するための有効的なひとつの手段と言えます。

会社の規模や展開している事業の内容にもよって異なりますが、企業におけるコストのうち、労働力そのものに対するコストや人件費というものは、非常に大きなウェイトを占める項目となります。

M&A成立後の収益性を向上させるためにも、人員整理による大幅なコスト削減を実現させておくことが重要です。成立後の大きなのれん減損のリスクを最小限に抑えることができると言えるでしょう。

まとめ

のれんの考え方を理解することで、売買価格にも影響があるため、売り手側の企業は少しでも有利な交渉を行うため、会社売却の基礎的な考え方として必ず押さえておく必要があります。

ただし、のれんの算定よって、売買価格や将来の業績に影響を与えるため、買い手側の企業はのれんについてしっかりと検討してくる可能性が高いといえるでしょう。正確で信頼性のある情報を開示しつつ、高値での取引ができるよう、売り手側の企業はM&Aの専門家の助言を受けながら進めていくことが大切です。

DX承継くんでは会社を売りたいと考えている方からのご相談等を無料で承っております。是非下記のご相談窓口からお気軽にお問合せください。

お問い合わせはこちらまで

 

おすすめの記事