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【大戸屋VSコロワイド】敵対的TOBはコロワイドが勝利!今後の狙いは?

大戸屋とコロワイドのM&Aは8月からニュース等でも話題になっており、多くの方がこの話題を目にしたのではないでしょうか。

通常敵対的買収を仕掛けられた企業については、買収されないよう買収防衛策をとるのですが、大戸屋の場合は買収防衛策を取らずにただ買収を拒否していた状態になっていました。

結果、このM&Aのは、コロワイドが買収に成功した形になり、大戸屋がコロワイドの傘下となったわけですが、今後コロワイドは大戸屋をどのように成長させるのが目的なのでしょうか。

本記事では、大戸屋とコロワイドが敵対的買収にもつれ込んだ背景から、コロワイドの今後の売り上げアップ作戦について言及してまいります。

半沢直樹に学ぶ!敵対的買収の4つの防衛策で倍返し

コロワイドによる大戸屋の買収が決定しました!

2020年9月9日、コロワイドが大戸屋の発行済み株式の46.77%を取得し、敵対的TOBが成立しました。コロワイドによる買い付け価格は一株3081円で、すでに保有していた19.16%の株式に合わせ、46.77%の株式を取得したことで、買収総額は70億円に上ったとされています。

大戸屋はコロワイドに対して、『コロワイドのセントラルキッチンが導入されれば店内調理の良さや大戸屋の味が失われてしまう』と株主に訴え続けてきましたが、結局、コロワイドの買収が成立したことで、子会社化がほぼ確定しセントラルキッチンが導入されることになります。

コロワイド側は今回の買収に対して、『早期に役員を派遣して経営改善に取り組む。素早く大戸屋の再建に取り組むには既存の役員の力も必要と考えているので現経営陣との協議を打診している』とコメントしており、大戸屋HD側の経営陣への協力を求め、一刻も早い経営改善に取り組む方針です。それでは以下でこれまでの流れを確認していきましょう。

コロワイドによる大戸屋へのTOBが過熱化

牛角やカッパ寿司などの外食チェーンを持つコロワイドは、、大戸屋ホールディングスの株を約19%保有する筆頭株主でした。簡単に敵対的買収に至った理由を説明するとするならば、筆頭株主ながら、コロワイドの改善提案を大戸屋が聞き入れないため、今回の、同意を得ない敵対的なTOB(株式公開買い付け)に発展したということです。

本項ではまず、敵対的買収にもつれ込んだ具体的な背景や、大戸屋側の買収防衛策等について解説していきます。

飲食業界では異例の敵対的買収

飲食業界ではオーナー同士が全般に仲が良く、話し合いの中で友好的にM&Aが決まっている事例が多いといいます。というよりは、そもそも日本におけるM&A自体が業種問わず、友好的買収が殆どで、約9割が友好的に取引が進められています。

しぶしぶ買収される場合でも投資ファンドが絡むケースが多く、財力を振りかざして強引に買収するような事例はあまりありません。

今話題の敵対的買収の成功率やメリットは?事例も5例ご紹介

敵対的買収にもつれ込んだ背景

コロワイドが大戸屋に対して敵対的買収を仕掛けた背景には、大戸屋の業績が伸び悩んでいることと、現場の生産性向上が遅々として進まないことがあります。

大戸屋の直近の業績に関しては後述するとして、要は、コロワイドが大戸屋に対して『業務効率をあげましょうよ!』と言ったことに対して、拒否したことで、コロワイド側が『それなら経営権を掌握して改革してやろう!』となり、敵対的買収に発展したわけです。

定食チェーンの多くは、店舗数拡大を目指すため、食材の加工を工場で処理する、セントラルキッチンを導入しています。それにより、現場スタッフのちょり負担が減り、ひいてはお客への料理提供までの時間を短くできるというメリットがあるからです。

現状、飲食業界では食材原料価格や人件費高騰による採算性の悪化や同業との価格競争に始まり、テイクアウトや弁当、総菜などの産業との競争、更には消費者の食生活の多様化など厳しい競争環境に置かれています。

市場競争が激しくなる中、早急な策を打たなければ生き残るすべがないという状況にも関わらず、一向に手を打たず、伝統を大切にする大戸屋に筆頭株主であるコロワイドは焦りを感じたのかもしれません。

大戸屋はシナジー効果が得られないと主張

コロワイドは本株主提案に際して、シナジー効果として

①仕入条件の統一によるコスト低減

②セントラルキッチ ンの活用

③物流網の共通化によるコスト低減

④新店立地・業態転換候補の共有化

⑤ノウハウの結集

を挙げましたが、大戸屋側はそれに対して、シナジー効果が得られる根拠や実現可能性は全く検証されていない、また、メリットがないと主張しました。

これには、創業当初から大戸屋が店のセールスポイントとしてきた『家庭の味』が失われる可能性があると危惧したためであると考えられるでしょう。コストの削減や業務皆瀬よりも、大戸屋は『飲食店としての味』を大切にしたかったということです。

大戸屋は買収防衛策を行わなかった

通常敵対的買収を仕掛けられた企業は、買収をされないように買収防衛策を取るのが一般的です。現在ドラマで話題になっている半沢直樹でも、半沢直樹側の企業が敵対的買収を仕掛けられた際、ホワイトナイトという方法で買収防衛を行いました。

買収防衛策にはいくつかの方法がありますので、詳しくは下記の記事をご覧ください。

買収とは?M&Aの手法や買収をされたくないときの買収防衛策を解説

しかし、東京都内で記者会見をした大戸屋HDの窪田健一社長は、敵対的買収について、『強行されたものだ』と避難し、買収防衛策に関しては現時点で検討していないとしました。また実際に、買収が決定するまでも大戸屋側は買収防衛策を行っておりません。

大戸屋とコロワイドの直近の業績

M&Aを行う上で、それぞれの直近の業績等は特に注意してみておきたいところですが、コロワイドと大戸屋双方の直近の業績はどのような具合なのでしょうか。

それぞれ見ていきたいと思います。

コロワイドの直近の業績

コロワイドとは、焼肉『牛角』や回転寿司店の『カッパ寿司』、『しゃぶしゃぶ温野菜』などの多才なブランドを持つ企業です。この中で1つは行ったことがあるという方も多いのではないでしょうか。

しかし、その割には、2020年3期の連結決算で最終損失64億円を計上しており過去最大の赤字となっています。それには新型コロナウイルスの感染拡大の影響などもあるのかもしれませんが、2016年ごろから5年近くの間ほぼ横ばいで、業績的にはあまりパッとしません。

2014年にはカッパ寿司を展開するカッパ・クリエイトを、2016年12月にはフレッシュネスバーガーを展開するフレッシュネスを買収しましたが、回転寿司店もバーガーチェーンも競争が激しいのが現状です。寿司店に至っては、食べ放題を導入したり、特急レーンをやめてみたり、様々に改善を試みてみたものの、スシローやくら寿司、はま寿司との差は開く一方であり、その矢先にコロナ禍で更に業績が落ち込んだことで未だ発展途上にあります。

そうした中、7月30日に福島県郡山市にあるしゃぶしゃぶ温野菜郡山新さくら通り店で爆発事故がおきました。事故が起きた店舗は改装工事に伴う休業中でありましたが、この事故により平屋の建物は全壊し、死傷者等を出したことで、30日に一時1296縁をつけていた株価は終値で1291まで下落しています。時価総額で言いますと約70億円が吹き飛んだことになり、少なからず敵対的買収に影響が出るのではという指摘もあります。

大戸屋の直近の業績

一方、定食屋『大戸屋』を経営する大戸屋ホールディングスの2020年3月期連結決算もあまりさえません。最終損失5億3000万円と初の赤字に転落し、コロワイドと同様に2016年頃から約5年間の間に年商もやや減少傾向です。

というのも、大戸屋のように、『おしゃれでありながら家庭の味を楽しめる定食屋』は、おもにビジネスマンや若い女性にウケを取っており、学生など若者が多い街にある店舗は不採算店舗となっていったのです。

そのような時代の流れもあってか、大戸屋のほうは新型コロナの影響を受ける前から業績は悪化していました。また、年齢層や流行などの要因以外で考えられるのは、人件費や材料費が圧迫していたという点です。サンマの不漁によりサンマ定食が予定通り販売できなかったことや、台風などの自然災害の影響等で営業時間が短縮されるなど、自然環境による影響も大きかったといえるでしょう。

敵対的買収が成立した理由は

直近の業績は買収側のコロワイドも被買収側の大戸屋もあまり思わしくない傾向でした。また、両社の2020年の6月の売上高もコロワイドが前年費71.3%、大戸屋が70%と共に3割減であり、新型コロナウイルスの影響もあってか、似たり寄ったりの現状です。

そうした中、大戸屋が敵対的買収に敗北した理由、コロワイドが敵対的買収に勝利した理由はそれぞれどのような理由があったのでしょうか。ここからはそれらの疑問点について考察してまいります。

大戸屋の株主が味方ではなかった!?

大戸屋は、今回の買収に対して一貫して『コロワイドのセントラルキッチンが導入されれば店内調理の良さや大戸屋の味が失われてしまう』と株主に訴え続けてきました。

しかし、『大戸屋を好き好んで食事する人=株主』というわけではありません。つまり、店内調理云々を株主に訴えたところで、食事をしたことがなかった株主や店内調理にそれほどこだわりがないという株主には当然その訴えは響かなかったということです。

大戸屋が買収防衛策をしなかった(できなかった)

通常、敵対的買収を仕掛けられた企業は、相手企業に買収されないよう買収防衛策をとります。しかし、大戸屋は買収防衛策を取らなかったどころか買収防衛策をも実践できなかったことが敗因の一つでもあります。

敵対的買収を仕掛けられた企業の多くは、第三者の企業に買収をお願いする『ホワイトナイト』という買収防衛策を行いますがコロワイドは赤字で苦戦する大戸屋株に、買収直前の株価に46%も上乗せした株価を提示しました。

大戸屋の買収に関心を寄せる企業や投資家がいなかったというわけではありませんが、コロワイドが高値をつけたことにより、46%を上回る金額では買収できないとして、皆ホワイトナイトになってくれなかったのです。

こうして買収防衛策がとれなかったことも、コロワイドへ買収を許した要因と考えられます。

コロワイドの戦略勝ち!

飲食店では味が命といっても過言ではないほど、味は大切ですし、おのずと調理形態も重要になってきます。

店内調理や家庭の味を大切にしていた大戸屋の魅力を抑えて『マーケット市場』で勝利することができたのは、まさにコロワイドの戦略勝ちといえるでしょう。

冷静に大戸屋のファンであれば、『味が大切だ』『調理は店内調理がよい』と分かるはずです。しかし、買収前の株価より46%も上乗せした価格を提示したことで株主は『キッチン』よりも『マーケット』に目が向き、その魅力に負けてしまったというわけです。

今後コロワイドは大戸屋をどのように再建していくのか

ここまでに解説した通り、コロワイドも大戸屋もあまり直近の業績は良くない状況でした。そもそもTOBをはじめ、M&Aを行う目的としては『両社が業績を回復できる』『それぞれにメリットがある』ということが前提です。要は、コロワイドが大戸屋を買収したことで、大戸屋もコロワイドの既存事業もそれぞれ経営回復できなければ意味がないといっても過言ではないのです。

そう考えれば経営不振同士の今回のM&Aは疑問視される部分でもあり、逆に期待が寄せられる部分でもあります。

ここからはコロワイドが今後どのように大戸屋を再建していくのかというところについて考察していきましょう。

セントラルキッチンの導入で業務効率化

1つは買収の目的でもあった、セントラルキッチンを大戸屋全店に導入することで業務効率化を図り、なおかつ回転率を上げることで売り上げアップを狙う方針です。

尤も、この業務効率化は最近様々な業種で求められており、業務効率化を行うためにAiシステムやIoTシステムなどデジタル技術を活用する企業もあるほどです。それだけ世の中的にも業務効率化が重要視されているということからも、業務効率化による売り上げアップは十分に期待できるでしょう。

新たな客層の集客

もしセントラルキッチンの導入で業務効率が改善され、料理の提供も以前より素早くできるようになるとしたら、これまで集客できなかったビジネスマンやOL等の集客ができるようになります。

そもそも、ビジネスマンやOLのお昼休みは約1時間であることが多いはずです。仮に店内調理で現在15分~混んでいる時で30分程度の時間を要しているとすれば、行き帰りの時間も含めると食事の時間がほぼなくなる可能性があるため、あまり好まれません。

しかし、料理の提供時間がセントラルキッチンを導入したことで5分から10分程度になれば、今後そういった新たな客層の集客も可能になり、売り上げアップにつなげることができるはずです。

機会損失を防ぎ、売り上げアップ

筆者もこれまで大戸屋には何度か足を運んだことがありますが、店内の席はいくつも開いているのに、人が何組も待っているといった状態が多くありました。子供連れで早く席に座りたい、次の予定が詰まっているといったとき、いくら『大戸屋の料理をたべたい』と思って訪れた客でも待つことができなければお客は帰ってしまいます。

しかし、セントラルキッチンの導入でキッチンの業務も軽減されるとホールの片付けや客の案内などもスムーズにでき回転率がアップすれば、機会損失を防ぐことが可能になるでしょう。

それが結果的に売り上げアップにつながります。

仕入れ費用を見直しコストを削減

また、業績を上げるには売り上げを上げることも重要ですが今かかっているコストを見直して固定費を削減することもまた重要です。

日常生活でも、毎月決まった給料でも、スマホを格安SIMに変更したり、安くで利用できる電気会社やガス会社に乗り換えたりと、固定費を見直すことで、以前より多く貯金をすることができるようになります。

それと同じで、コロワイドは、大戸屋の仕入れにかかってくる費用を見直すことでコスト削減をし、最終的な業績アップを目指しています。

現経営者陣に協力を求め、経営改善へ

とはいえ、コロワイドは早期に役員を派遣して再建に取り組むためには、大戸屋の既存の役員の力も必要であるとして、現経営陣との協議を打診しているといいます。

ただ、大戸屋側はTOBへの強烈な反対声明があったことから現経営者が自主的に今後の経営に協力するということはまずないと考えられるでしょう。しかし、コロワイド側は現在47%の株式を取得しており、経営権を握っておりますので、結果的には協議の末現経営者が経営に参画し、大戸屋の経営改善を行っていくと予想されます。

そうはいっても、該当の経営者陣がやめてしまったり、近々の退職を考えて意欲喪失をしていたりした場合は、コロワイドの計画通りに進まない可能性もあるかもしれません。

まとめ

人々の食生活の多様化、自然環境や生活環境の目まぐるしい変化により、飲食業界は厳しい競争の渦にもまれています。

そうした中で、昔からの伝統を大切にする事業が生き残るのか、それとも時代に合わせた施策等を取り入れた事業が生き残るのか、という目線で見ると特に今回のコロワイドの買収は注目すべきです。

飲食業界に限らず、その他の業界でも、時代の流れに合わせて都度変化していくことは大切であるものの、やはり伝統への愛着は無視できないものであるでしょう。しかし、現実問題それを無視したところで生き残る術はあるのか、そんな現代特有の疑問点を突きつけるような事例とも言えます。

M&Aを実施する理由はそれぞれですが、企業それぞれが抱える様々課題や問題点を解決する1つの策として、M&Aは、自社にはないノウハウ等を他社から取り入れることができるという面で非常に有効的です。

コロワイドの今後の経営を見守りながら、M&Aに対する理解も深めていってみてはいかがでしょうか。

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