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親族内承継で子供に事業を引き継ぐときのポイント

事業承継の方法としては家業を継ぐといった意味でも、『親族内承継』が一般的によく知られている方法なのではないでしょうか。実際、これまで作り上げてきた会社は是非、親族に継いでほしいと考えている経営者も少なくないはずです。

しかし、親族内承継の場合、経営をした経験のない経営者の実子やその他親族に事業を引き継ぐことになる可能性もあるため、長期的な計画や教育をしておかなければ倒産のリスクも高くなってしまいます。

本記事では、親族内承継で子供などに事業を引き継がせるときの注意点や、親族承継が何らかの理由でできない場合の対処法について解説してまいります。

親族内承継とは

そもそも、親族内承継とは現状の経営者の『親族』にあたる人物に事業を承継することを指します。

2015年に中小企業庁が行った調査によりますと、35年以上40年未満の在任期間では、約9割以上が親族内承継をしているといったことが明らかになりました。

親族内承継は幼いころから経営者の事業方針を目の当たりにしてきた娘や息子などに事業を引き継がせるため、早期から準備ができるほか、周りからの理解や協力を得やすいことがメリットとして挙げられます。

あわせて、経営に対する考え方などもそのまま承継できる可能性が高いので、従業員もこれまでとほぼ変わらず業務にあたることができるため、経営方針の食い違いによる退職なども防ぐことができるでしょう。

尚、親族内承継には下記の3つの方法があります。

相続による承継

生前贈与による承継

売買による承継

ひとつづつ解説していきます。

①相続による承継

1つは相続による承継です。相続による承継では、現経営者の生前に後継者へ事業用財産や株式などを移転せず、亡くなった後に相続によって後継者に承継させる方法です。この場合、経営者本人から実際に誰に承継をするなどの事柄を書いた『遺言』にしたがって事業用財産や株式など会社関係資産を相続させなければなりません。

なお、相続税は基本的に基礎控除が認められ、贈与税より安くなることがあるため、亡くなった後に事業承継をする場合は、相続による承継を行う場合が殆どです。

②生前贈与による承継

一方、先ほどのパターンは経営者が亡くなってから事業承継という形でしたが、生前贈与の場合は経営者が存命のうちに後継者に事業を承継します。

生前贈与の場合は贈与税が課税され、相続税よりも高額になる可能性がありますが、生前に経営者に経営を手伝ってもらいながら徐々に進めていったりすることができるので、比較的その後の経営は安定させやすいでしょう。

③売買による承継

上記2パターンは現経営者に利益等はない承継方法でした。しかし、親族承継でも売買によって承継をする方法もあります。

事業承継の中には事業の1部、またはすべてを第三者に譲渡する『事業譲渡』という方法がありますが、親族内承継でも事業譲渡を行うことは可能で、後継者は現経営者に事業譲渡の代金を支払うことになります。

売買の場合は贈与税や相続税が必要ない一方で、後継者の親族が譲受のための資金を準備しなければなりません。ただし、親子間で事業承継が行われる場合は殆どこの方法は利用されず、採用されるケースとしては実子以外の親戚などの場合のみとなるのではないでしょうか。

親族内承継の流れ

親族内承継の流れとしては、下記のような流れで行われるのが一般的です。

①親族から後継者候補を選んで教育

②株式を移転する手だてを検討

③遺言・生前贈与を検討

④保証や担保を交代

①親族から後継者候補を選んで教育

親族から事業承継の候補が決まれば、今後経営を担っていく人材として、経営のノウハウや知識を教え、育成する必要があります。この時の教育が曖昧ですと、いざ事業を承継した時に経営状態が傾いてしまい、すぐに倒産してしまうケースもあるかもしれません。

現経営者が教え込むのはもちろんのこと、後継者にも経営セミナーに積極的に参加してもらったり、承継前から役員として実務にあたってもらったりしながら進めていくことが一般的です。

②株式を移転する手だてを検討

親族内承継で事業を承継するには、後継者に経営権を掌握させられるよう、現経営者が後継者に株式を移転しなければなりません。

この時、現経営者が後継者に十分な経営権を渡せるくらいの株式を持っていない場合には買い集める必要もあります。

③遺言・生前贈与を検討

相続で承継をするのか、生前贈与で事業承継をするのかも、事前に決定しておかなければなりません。相続で承継をする場合は遺言などの準備が必要ですし、生前贈与で事業承継をする場合は贈与契約書の作成も必要です。

なお、後継者が決まったらいずれ親族に事業承継をすることを取引先などの周囲に伝えておくと、承継前から担当を後継者に変更できるなどスムーズに対応することができます。

④保証や担保を交代

現経営者が金融機関などから借り入れをしていた場合、相続や贈与の場合はそれらがそのまま承継されます。そのため、金融機関と交渉をして保証や担保を外してもらい、後継者と交代してもらう手続を行う必要があります。

ちなみに、事業譲渡で親族内承継を行う場合は、通常のM&Aと同様に引き継ぐ契約と引き継がない契約を選択することができるので、借り入れなどがそのまま承継の対象になるわけではありません。この部分については、事業承継における交渉の時点でしっかりと話合って双方が合意の上で契約締結を行うことが重要です。

親族内承継で事業を子供に引き継ぐときの注意点

ただ、親族内承継は日本の事業承継でもメジャーな方法ではありますが、事業承継後に家族の仲が曖昧になってしまうなど、以外にもリスクの多い承継方法です。

ここからは親族内承継で事業を子供に引き継ぐときの注意点について解説していきます。

準備には時間の余裕を持って行う

1つは事業承継のための準備に時間がかかってしまいます。後継者を一人前の経営者に育てるために、それなりの教育も必要ですし、生前贈与や相続などの書類作成も必要です。もちろん現行の経営者としての仕事も多くあるでしょう。

そうした中、まだ完全に準備が終わっていない段階で経営者が突然倒れてしまう可能性もあるかもしれません。

万が一のことも想定しながら、準備の時間には余裕を持っておくことが重要です。

従業員や親族から理解を得ておく

相続や贈与の場合は売買などではなく子供にそのまま経営を手渡す形になります。そうすると後継者となった子供は実親が経営者だったということで、承継するだけで経営者になったと見られてしまう可能性もあるわけです。

親族や他兄弟の中にはうらやましがる人もいるかもしれませんし、従業員の中でも役員などの立場で経営に携わっていた人ですと、自分のほうが適任なのではと感じる人もいるかもしれません。

また、相続や贈与の場合の遺留分は金銭的な問題となるため、遺産分割の対策も必要です。株式や事業用資産の評価額を試算するとともに、それ以外の試算がどのくらいあるのかを把握したうえで遺産分割の方法を検討する必要があります。

このように親族内承継をする場合は、後継者以外の親族や従業員にも配慮しながら事前に従業員や親族から理解を得ておくことがその後の経営を良好に保つために重要であると言えるでしょう。

個人保証への対応

親族内承継を行うまでに借り入れなどが完済されていれば良いのですが、大抵の場合借り入れについての個人保証をしておりますし、まだ借り入れが残っている場合もあります。

事業承継の際にはこうした個人保証や担保を外し、後継者に引き継いでもらう必要があるのです。

こうした個人保証の交代にあたって、金融機関の了承が必要ですが、まだなんの実績もない後継者に経営権が移っても保証人の変更を認められない可能性があります。しかし、先日成立した中小企業庁成長促進法によりこの部分については信用保証協会が個人保証を肩代わりする新制度が設けられました。制度を上手く活用してスムーズに親族内承継を進めていけるよう検討していくことも大切です。

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親族内承継ができない場合の対処法はある?

ただし、親族内でトラブルが発生する可能性が高い場合や、そもそも子供が事業承継をする意思が亡くなったなどの場合は親族内承継ができなくなってしまいます。

それでも会社をなくしたくない、誰かに経営を引き継いでほしいと考える経営者様は少なくないはずです。

もし、親族内承継が難しい場合でも、親族以外の第三者にM&Aで事業者会社を売却し経営を引き継いでもらうことは可能です。この場合は第三者に後継者となってもらうわけですので、経営方針が変わってしまう可能性もありますが、どんな人に経営を引き継いでほしいなどの希望や今後の展望を明確にしておくことで、後継者も見つかりやすくなるうえに、従業員からの了承も得やすくなります。

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また、M&Aの場合は売買で取引を行いますので、現経営者は事業承継によって売却益を得ることができ、多くの遺産を親族に残したり、今後の生活資金にしたりすることもできます。そうしたことで、経営を早期にリタイアして、第二の人生を楽しむといった考え方を持つ経営者もいらっしゃるようです。

いずれにせよ、親族内承継ができない場合でももちろん会社を残して第三者に事業を承継してもらうことは可能ですので、是非M&Aをお考えの方はDX承継くんのお問合せ窓口までお気軽にご相談ください。

まとめ

本記事では親族内承継についてまとめました。親族内承継は、経営者自身の子供や親族などゆかりのある人物に引き継ぐ方法ですので、経営方針のすり合わせや教育などは比較的上手くいくかもしれません。しかし、遺産の相続におけるしがらみや諸手続きの煩雑さも相まって、親族内承継を懸念する声もあるようです。

また、近年ではいろいろなビジネスが多様に存在していることから、子供が就きたい仕事と、承継対象のビジネスが相違しており、後継者候補の子供や親族自身が事業承継を拒否するケースも多々あります。

どの事業承継の方法も一筋縄で行くものではありませんが、親族内承継に限らず第三者に承継をする方法など、事業承継にはさまざまな形がありますので経営が存続できる方法を検討していくことが大切であると言えるでしょう。

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