老舗旅館の売上をV字回復させた方法とは?

宿泊施設の中でも、旅館は日本の古風なテイストを売りにした施設も多く、外国人観光客を中心に人気を集めていました。中には来客者の90%以上が外国人観光客であるという施設もあります。

しかし、新型コロナウイルス感染症の影響もあってインバウンドの集客が見込めない今、老舗旅館は大幅に売上が減少しているところがほとんどです。この危機を脱却すべく、老舗旅館をはじめ多くの旅館・ホテルが新しいカタチのビジネスモデルや集客などを使いこの危機を脱却しなくてはなりません。

本記事では、廃業寸前だった老舗旅館をたったの3年でV字回復させた事例から、今後老舗旅館が行っていくべき売り上げアップの対策方法についてご紹介してまいります。

旅館の現状

宿泊業には、様々な業態がありますが、旅館業法では、旅館、ホテル、簡易宿所、下宿の四4つに分類が可能です。具体的な定義としては和式の宿泊施設が旅館、洋式の宿泊施設がホテル、その他民泊などが簡易宿所、一か月以上の滞在を伴い、間借りする形でそこに生活をするのが下宿であると思っていただければ良いでしょう。

中でも旅館は、毎年1000~2000の施設が廃業をしているとされており、1980年代から減少を続けています。

(出典:総務省統計局)

一方、洋式のホテルの傾向としては、旅館が急激に減少傾向となった1980年代ごろから対照的に増加を続けており、16年には過去最高の9,967軒となりました。

(出典:総務省統計局)

また、客室数でみてもホテルの方が1軒あたりの客室数が多く、合計の客室数ではすでに旅館を上回っています。この数字は2010年に逆転し、直近では旅館の客室数が70満室なの二大して、ホテルは85満室です。ホテルは客室数が増加しながらも稼働数が堅調に上昇する一方で、旅館では客室数が減少し、稼働率が微増にとどまっているのが分かります。

(出典:総務省統計局)

外国人観光客の利用者が多い旅館業にとって、洋式のホテルと比べると、外国語対応が遅れている、予約サイトへそもそも出稿していない、国内旅行客へ旅館の魅力が伝わっていないなどの理由が売り上げ減や廃業の要因として考えられるでしょう。はたまた旅館の内部の問題として人材不足、後継者不足なども考えられます。

そして今回の新型コロナウイルスの影響で廃業・閉業を余儀なくされた宿泊施設は全国41社に上り、廃業・閉業等をしていない施設でも、多くの施設が売り上げ前年比80%減となっています。このままの状態ですと売り上げ・軒数はますます洋式ホテルに吸収されていき、多くの旅館が撤退することにもなりかねません。

旅館の売上を上げるDXとは?

旅館の売り上げというのは、『来店者数×購入数×商品消費単価』によって決まります。そもそも客室数の少ない旅館業にとっては、収容率はもちろんのこと、お客ごとの購入数、単価をあげなければ売り上げアップは見込めません。

また、人件費の圧迫、人手不足等に悩む旅館の現場で、業務を効率化しつつ、接客サービスを向上させることもまた、旅館の課題であります。

こうした諸問題の解決策として、近年話題になっているのが『DX』という方法です。本項では、『DX』とは何か、そして『DX』を行ったことで、老舗の旅館の売り上げがV字回復した事例をご紹介していきます。

そもそもDXとは?

そもそも、DXとは何なのかというところから解説していきましょう。日本古来の『おもてなし』を重んじている和風旅館にとってはあまりなじみのない言葉かもしれません。

DXとは、デジタル技術を活用して業務やビジネスをよりよくしましょうという考え方のことを指しています。簡単に言えば、旅館をデジタル化して、業務効率アップ、売り上げアップをしませんかということです。

これまで紙で予約伝票を管理していたモノを、電子化するのもDXですし、宿泊料のお支払いを現金ではなく、クレジットカード・QR決済などのキャッシュレスにすることもDXです。はたまたWi-Fiを導入したり、客室一室一室にフロントとつながるタブレットを導入することもDXになります。

この説明でわかるように、DXには具体的な定義等がなく、デジタル化にかかわる幅広い内容が含まれています。要はデジタル技術の活用、およびIT化によって旅館の売り上げが上がる、業務効率化につながったなど、以前よりよりよくなればそれは『DX』をして成功したと言えるでしょう。

老舗旅館がDXでV字回復

神奈川県の鶴巻温泉にある『陣屋』は創業100年の老舗旅館です。約10年前までは、10億円ほどの負債を抱え、廃業か最終手段のM&Aを行うかどちらかの選択を迫られたいたほどに危機的状況でした。

しかしながら、2009年から少しずつDXを進めていき、ITシステムを活用していったことで、老舗旅館陣屋は約3年で黒字転換を実現しています。また、旅館業務の多くをシステム化したことで業務効率化に成功し、旅館業では大変珍しい『週休3日』を導入しています。これによりもともと30~40%であった離職率を、たったの数%程度にとどめることにも成功しました。

特に、陣屋自社開発のクラウド型旅館システム『陣屋コネクト』は、日本サービス大賞の総理大臣賞を受賞し、今や全国250社のホテル、旅館に導入されるなど各方面から注目を集めています。

老舗旅館陣屋が行ったDXは

①予約・顧客台帳等のペーパレス化

②タブレットによるすべての情報の管理

③調理データをクラウドで管理しロスの低減

④清掃管理・施設管理の効率化および自動化

⑤勤怠・経理のシステム化

⑥経営状態をクラウド上で管理

の6点です。これらのシステムは、陣屋コネクトとして製品化も実現しています。

接客から管理、経営までのすべてをデジタル化することで、現状の問題点等を可視化し、改善スピードの向上や、業務効率化による接客パフォーマンスの向上につなげることができています。

特に旅館全体の情報を1つのタブレットですべて確認することができるために、設備上の管理漏れ等を防ぐことが可能です。その上、顧客情報もすべてタブレット上で確認をすることができますので、例えば、お食い初め等で来店したお客に対しては、来店した時点で『おめでとうございます』等と声をかけることができ、通常の接客以上の接客を行えることで、リピート率の向上にもつなげることができるといいます。

陣屋がDXを行う前、10億円の負債を抱えていた当時にM&Aを実施しようとしたところ、売却価額は1万円程度といわれたそうです。無理な売却や、廃業よりも、DXを行うことで、最初は少々コストを必要としても、新しい形で前に進むことができると世間に言わしめた例であると言えるでしょう。

旅館でできるDX

DXにより、業務改善や作業効率化が実現されます。たとえばITシステムやクラウドシステムツールの導入により、予約管理、売上管理、出迎え、清掃といったワークフローのデジタル化などが行えるでしょう。具体的にどんなことができるのか、見ていきましょう。

①予約管理のデジタル化

IT導入を導入することで、これまで紙で行っていた旅館の作業をデジタルに移行できます。たとえば予約システムの場合、従来は電話予約が主流でした。紙の予約台帳は数が限られているので、一度に少人数しか閲覧できません。予約の電話が入っても、予約状況確認のために待たせてしまうという事態も発生していました。

デジタル技術を活用することでネット予約に対応することが可能です。また予約状況の管理・把握もネット上で一元管理できるようになります。予約に関わる業務を効率化すると共に、ペーパーレス化も実現できるでしょう。

②パソコン・タブレットであらゆる情報を一元管理

予約情報、顧客情報、売上情報など、旅館ではさまざまな情報を管理しなければなりません。DXによりさまざまな情報が、ITシステムやクラウドツールで一元管理できるようになります。顧客情報や会話履歴をシステムに記録することで、いちいち他の人に効かなくても把握が可能です。また朝礼、夕礼、業務の引継ぎといった従業員同士のコミュニケーションも、チャット機能で行えます。タブレット一つあれば、従業員同士の情報共有・管理もお手軽に行えるようになるでしょう。

③食材ロスの軽減

旅館の調理場では材料切れを防ぐために、食材を多めに仕入れることがあります。結果的に食材ロスにつながり、不要なコストを抱えてしまうケースもあるでしょう。

しかし、DXで旅館システムを導入すれば、あらゆる最新の情報をリアルタイムで管理・把握・共有が可能となります。調理場が予約状況をリアルタイムに把握できるようになった結果、発注業務や食材ロスの軽減に繋がったという事例もあります。

④清掃管理の効率化

旅館では毎日慌ただしくチェックイン・チェックアウトが繰り返されています。そのためスピーディーな清掃・点検が欠かせません。しかし清掃完了連絡、破損・欠品の報告など、清掃スタッフとフロント・管理部門との情報共有が効率的に行えないという問題がありました。

そこでおすすめなのが、スマホやタブレットを利用した清掃点検アプリです。清掃スタッフは完了報告や破損・欠品の情報をアプリに入力すれば、リアルタイムに各部門に共有されます。フロント・管理部門は現場に赴かなくても、その場からタブレットを通して指示が行えます。またチェックシートのような性質もあるので、作業漏れも防止できるでしょう。

⑤勤怠・経理のシステム化

旅館業界の勤怠・経理システムは、一般的な企業よりも複雑だとされています。何故かというと、フロント・清掃・キッチン・管理部門など、 職務ごとに勤務形態が異なるからです。また正社員・派遣社員・パート・アルバイトなど、さまざまな雇用形態の従業員が勤務しています。役割によって契約内容も異なるため、給与計算や時給変更など、ミスが発生しやすいという側面もあります。

旅館向けの勤怠管理システムなら、複雑なシフト体系に対応しています。簡単な操作で急なシフト変更や時給変更にも、柔軟に対応が可能です。あらゆる従業員の勤務状況を一元管理し、リアルタイムの確認も行えるので、勤怠・経理に関わる業務をサポートしてくれるでしょう。 

⑥経営状態を正確に管理

旅館を経営する上で、経営に関わる数値の把握は重要です。しかし入力システムが統一できていなかったり、部分的に手書きの台帳を使っていたりすると、数値を正確に把握できていない旅館の事例も見受けられます。

旅館システムならレポート機能を活用して、売上状況、利益推移など欲しい情報をグラフで表示することも可能です。また単品管理、部門ごとの管理・商品ごとの管理といった細かい原価・利益管理も可能となります。経営状況を見える化することで、迅速な経営判断が行えるようになるでしょう。

旅館がDXを行うときの注意点

旅館の業務をサポートし、売上を回復してくれる見込みのあるDXですが、行う際には以下のような点に注意してください。

費用を検討する

旅館・ホテルシステムの導入を検討する前に、まず注意したいのが予算の確認です。システムにどの程度予算を割けるかは、旅館の経営状況により異なるでしょう。システムの費用には初期費用、月額費用、サポート費用、オプション費用などが含まれます。とくにオプション機能は、何が必要なのかをよく見極めて契約する必要があるでしょう。旅館システムを提供している複数の企業で見積もりを取って、予算内で運用できるシステムを選ぶのがおすすめです。

導入スケジュールを検討する

DXを導入する時に、まず必要なのが導入時期・スケジュールの検討です。いつから導入するのか、発注後に必要な期間について考えた上で、準備を進めてください。検討する期間が短いと、じっくり考える時間が足りず、本来の要望に沿わないシステムを導入してしまうケースも考えられます。

各社からの見積もりを十分に比較して、従業員のトレーニング期間も考えて、スケジュールを組むのがおすすめです。一般的には導入の打ち合わせ開始からトレーニング、本番稼働まで含めて1ヶ月半~2ヶ月ほど見ておくといいでしょう。

スタッフがシステムを使いこなせるか

旅館側のスタッフがITやコンピューターに苦手である場合、導入するシステムも簡単な操作で扱えるものがおすすめです。ITに詳しくないスタッフが多い施設で複雑なシステムを導入しても、使いこなせず無駄になってしまうケースも少なからず見受けられます。経営者や現場スタッフなどのITスキルを把握した上で、スキルに見合ったシステムを選ぶ必要があります。

理想としては、各社のデモンストレーションなどで実際に触れてみて、使いやすいシステムを比較検討できると良いでしょう。 

サポート体制は整っているか

万が一システムにトラブルが発生した時には、すぐにサポートしてくれる体制が整っているシステムが安心です。旅館はお客様の都合に合わせて、深夜でも対応しなければならない時があるかと思われます。そのためシステムも、24時間365日対応できるサポートシステムがおすすめです。

これからの旅館にもとめられる旅行体験

これから先、旅館に求められるのは外国人観光客はもちろんのこと、国内旅行者の集客です。旅館に比べて洋式ホテルはスムーズに入室できて、コンビニやお土産施設などの周辺環境も充実しています。中には部屋1つ1つにタブレットなどが整備されており、周辺施設の情報を確認することができたり、洗濯機の場所、自動販売機の場所、お風呂の空き状況等の館内情報を確認することができたりと、ハイテク化が進んでいます。

そのため、国内旅行者は、便利で簡単に宿泊できるホテルを選択してしまいがちなのです。

古風な旅館、老舗の旅館だから、デジタルは懸念するというのではなく、時代の流れに合わせたシステムの導入や新たな顧客体験を取り入れていくことが重要になってくるでしょう。

特に、今後コロナウイルスの感染拡大が収束した際は、一気に様々な宿泊施設が外国人観光客の迎え入れを強化していくことが予想されます。日本風の旅館に泊まりたいと思っている外国人が多くいるのにも関わらず、旅館にWi-Fiが設置されていなかったり、キャッシュレスに未対応だったりすると、外国人観光客は旅館を避けて宿泊をしてしまうことになります。

今このタイミングをチャンスとして、IT化を取り入れていない旅館等に関しては、Wi-Fiやキャッシュレスなど、身近なところからDXに取り組んでいくと良いかもしれません。

まとめ

デジタル技術やデータを活用してビジネスモデルを創出、又は変革する『DX』は老舗旅館陣屋やその他宿泊施設のサービス運営にも活用され始めています。

日本人はとりわけ『おもてなし』が得意であり、旅館に至っては更にその傾向が強く、お出迎えからお見送りまで、スタッフが丁寧に接客するという施設も少なくないでしょう。

しかし、そうした時間をかけた接客が実はバックヤードの業務に負担をかけていたり、はたまた内部の業務に圧迫を与えている可能性もあります。

丁寧な『おもてなし』を削減しようというのではありません。

DXを実施し、顧客に便利システムを提供したり、内部の業務効率化を行ったりすることで、更に行き届いた『おもてなし』、接客サービスができるようになるということです。

しかし、これまでデジタルとは全く無縁だったというような老舗旅館などですと、なかなかDXの実施はどこからすれば良いのか分からないという方もいらっしゃるかもしれません。お困りの方、ご相談のある方は是非下記のお問合せ窓口から、お気軽にご連絡ください。

一緒に旅館業のDXについて考えていきましょう。

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