M&A

製造業のM&A動向と事例や注意点・ポイントについて解説

2020年は、多くの業界でM&Aが行われた年でもあり、特に大企業同士の大型M&Aに関しては、大戸屋とコロワイドの事例、NTTとドコモの事例、ニトリと島忠の事例等、ニュースで目にした機会も多かったのではないでしょうか。

そうした中、製造業においてもM&Aによって事業承継を行う事例が増えてきています。そこで、本記事では製造業の業界動向から、M&A動向と合わせて、メリットや注意点についても解説していきます。

製造業でM&Aを検討されている方は是非参考にしてください。

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製造業の業界動向について

製造業のM&A動向について見ていく前に、まずは業界動向から解説していきましょう。

そもそも製造業とは、簡単に言いますと製品を作っている業界です。日常で使用するあらゆるものを製造業が作り出しているといっても過言ではないでしょう。

製造業の中でも、自動車・電気機器業界では世界で活躍している日本企業も多数あり、今後も伸びていく業界であると期待できます。ただ、業界の特徴としては、工場建設や設備投資において、多額の先行投資をしなければならない点です。また、他の業界と比べて、それらのマネタイズが取れるまでに、長い期間を要します。

それだけ多額の初期投資が必要であり、事業規模に応じたキャッシュフローやプロセスがなければ継続が難しい業界であるともいえるでしょう。

製造業のM&A動向

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製造業のM&Aでは、製造業同士のM&Aが基本です。異業種とのM&Aはほぼ実例がありません。一般的には、同業に売却するか、投資ファンドに売却するかいずれかの手法でM&Aが実施されます。

実際、製造業のM&Aは近年多く実施されており、食品業界やIT、ベンチャー企業などと並んでM&Aが多い業界とされています。特に、2009年から2018年の10年間の間で、買収件数は3,561件、売却件数は989件に上りました。

目的としては、生産ラインのIT化やオンライン化などを実現するためとされており、それらを設計、制作している企業は高値がつきやすい傾向にあるようです。

製造業のM&Aのメリット

と、このように、件数的にも多く実施されている傾向にある製造業のM&A。とはいえ、実際は、他業種とのM&Aはほぼ無いということから、自社で新規事業の設立等に取り組もうと思えばできるのでは?M&Aを実施する意味は?と疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。

では、製造業がM&Aを実施するのにはどのようなメリットがあるのでしょうか。売り手側、買い手側それぞれで見ていきます。

【売り手側のメリット】

売り手側のメリットとしては、売却益を得られるという点です。特に、先ほども申し上げた通り、IT、オンライン系を扱っている業態の場合は、高値がつきやすいとされています。買い手も複数つく可能性があるため、競争環境が勃発し、結果的に相場よりも高い値段で売れることもあるでしょう。

経営者にとっては、売却益で第二の人生をたのしんだり、セミリタイアを試みるきっかけにもなるかもしれません。

更には、基本的にM&Aでは買い手側のほうが企業の規模が大きく、売り手側が傘下にはいる形で実施されます。そのため、これまでよりもブランド力があがるなどの効果も期待できるかもしれません。

【買い手側のメリット】

一方、買い手側のメリットとしては下記の項目があげられます。

①人手不足問題を解決できる
②採用コストを削減できる
③教育コストを削減できる
④他社のノウハウを共有できる
⑤IT化、DX化を促進できる

5つの項目についてこれから解説していきます。

①人手不足問題を解決できる

1つは、人手不足問題を解決できるという点です。近年人手不足は製造業をはじめ業界問わず抱えている問題であり、人手が足りないために倒産に追い込まれる企業もあります。そうした中でも、他社をM&Aで買い取り、ノウハウや技術の蓄積された企業の従業員も同時に獲得できることで、効果的に人材不足解消にアプローチできるわけです。

②採用コストを削減できる

尤も、人を雇うには、1人を雇うだけでも膨大なコストが必要です。広告を配信したり、転職サイト、新卒募集サイトなどに登録したり、人材紹介に登録したりなど、多くの手を売っている企業は多いでしょう。

応募が来れば、もちろん面接などの時間を割かなければならないわけです。その点、M&Aで一気に人手を採用することができれば、採用コストの削減にもつながられます。

③教育コストを削減できる

かつ、すでに蓄積されたノウハウや技術があれば、教育する必要もなく、即戦力として働いてもらうことができます。

通常、新人を入社させれば1~10まで教育を行い、勉強会などを実施する必要があり升が、M&Aではそれをする必要がないので、教育コストの削減にもつなげることができるでしょう。

④他社のノウハウを共有できる

当然、会社それぞれに、企業秘密などは存在するものです。それは、もちろんその企業に属する者しか知ることはできません。

しかし、M&Aを実施すればそのような他社のノウハウも共有でき、かつそれを業務に活かすことができます。自社のノウハウと相性の良いものであれば、相乗効果(シナジー効果)も期待できるでしょう。

⑤IT化、DX化を促進できる

また、近年話題になっているのがIT化だけでなく、デジタルを利用して企業をより良い方向に変革させるという意をもつ『DX化』です。DX化は、デジタル企業やIT企業、ベンチャー企業にとどまらず、今後どの業種でも必要になってくる施策であるとも言え、国内企業のDX化をすすめるべく政策支援も多数行われているところです。

製造業においては、デジタルを扱っている企業、ITを扱っている企業を買収することで、一気にDX化やIT化を促進することが期待できます。特に、今後デジタルを導入しDX化をおこなう企業が増えてくる中、そのような製品の需要が爆発的に拡大していくことが予想されるでしょう。

今からアプローチしていくためにもIT化、DX化を目的としたM&Aは製造業にとって特にメリットのある施策といっても過言ではありません。

製造業のM&A事例

続いて、製造業のM&Aの事例を見ていきます。

1.テクノホライゾン・HDによるブルービジョンへのM&A

2020年5月、テクノホライゾンホールディングスは、ブルービジョンの発行済み株式を81.11%取得し、グループ会社化しました。

もともと、テクノホライゾンHDは、光学分野と電子分野において開発から販売までを総合的に行っている企業です。一方ブルービジョンは光学機器の製造に特化した企業になります。

テクノホライゾンHDとしては、ブルービジョンのノウハウをグループ内に取り込むことで、光学分野の製造ノウハウを得られ、高いシナジー効果が期待できるとしています。

2.栗田工業によるAvisutaへのM&A

2例目は、栗田工業によるAvistaへのM&Aです。2019年5月に、栗田工業は子会社を通してアメリカ企業のAvistaを株式譲渡により子会社化しました。

 

もともと、Avistaは水処理事業で成功している企業でもあり、栗田工業が同社を買収することで、水処理装置の構成機器に関するサービスの強化、水処理事業での世界進出における事業基盤強化を図っています。

3.ムロコーポレーションによるイガリ・HDへのM&A

ムロコーポレーションは2019年3月、精密樹脂成形部品メーカーのイガリホールディングスを子会社化しました。

ムロコーポレーションは精密プレス部品メーカーであることから、自動車業界の変革において、厳しい状況にあります。今後はイガリHDと手を組むことで、グローバルでの協業や製品ラインアップの拡充等、強化を図り、自動車以外の製品提案力の向上を検討していく考えです。

製造業のM&Aの注意点、ポイント

では、最後に製造業のM&Aの注意点とポイントについて解説していきます。

シナジーを想定する

1つはシナジー効果を想定することです。シナジーとは、簡単に言えばM&Aを行うことによって得られる相乗効果をさします。M&Aを行う目的の殆どは大枠で見ればこの『シナジー効果』といっても過言ではありません。

双方の企業に足りない部分は、M&Aを行うことで相互補完関係となり、さらに双方の企業の良いところはお互いに伸ばしていくことで、高い成長性が期待できる可能性もあります。

オンライン化、DX化も視野に

また、今後はオンライン化やDX化も視野にM&Aを実施する企業が増えていく可能性があります。というのも、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、多くの企業が在宅ワークを取り入れたり、オンライン商談をおこなったり、デジタル製品の導入をおこなったりしました。働き方が大きく変わった一年であったともいえるでしょう。

そのような変化に対応すべく、これらのノウハウをもった企業とM&Aを実施することで、早急にDX化やオンライン化を行うことができると考えられます。

グローバル化がカギになる可能性も

そして、販売チャネルの拡充に関しては海外企業とのM&Aを行うことで世界規模でシェア拡大を狙える可能性もあります。

今後は、オンラインやDX化が進んでいくことで、企業同士の交流もオンライン化していくことが予想されるでしょう。海外企業との交流もこれまでよりしやすくなるかもしれません。

まとめ

本記事では、製造業のM&A動向、事例やメリットと合わせて、M&Aを行うときのポイントもご紹介しました。近年ではどの業界でもM&Aの実施が盛んになっているようです。その理由としては、ノウハウの共有やシナジーの獲得、販売チャネルの拡充などはもちろんのことDX化やオンライン化を目的としたM&Aが増加傾向にあるからです。

製造業ではないですが、実際にNTTとドコモの事例、文藝春秋とnoteの事例はDXを目的としたM&Aであると想定されます。今後は業界問わず企業の成長戦略として、はたまた生き残り戦略としてDX化は重要なポイントとなってくるでしょう。そういった部分からも、今後は製造業でもDX化やオンライン化を目的としたM&Aが実施されていくようになるのではないでしょうか。

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